ラノベはもう「子ども向け」じゃない? 双葉社が新レーベル「モンスター文庫」創刊
- 『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける(1) (モンスター文庫)』
- 横塚 司
- 双葉社
- 670円(税込)
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ライトノベルを読んだことがありますか?
アニメやゲームのような世界観を持つ作品が多く存在し、活字だけでなくいわゆる「萌え系」の表紙イラスト、挿絵が随所に散りばめられた小説のジャンルがライトノベル(ラノベ)。かつては中高生が主な読者層とされていましたが、現在は若いころからラノベを読んでいた人が大人になったことで、30代の読者も中核を占めているという声があります。
また、岩井志麻子さん(『岡山女』が第124回直木賞候補)、桜庭一樹さん(『私の男』で第138回直木賞受賞)といったラノベから一般のエンタテインメント小説へ移行した作家も登場し、一方で、冲方丁や有川浩のようにラノベと一般向け小説の中間に位置づけられるような作家・作品も存在します。
ラノベを、「子ども向け小説」といった枠組みでくくることは、過去のものとなりつつあるのかもしれません。
そんななか、双葉社がラノベ・レーベル「モンスター文庫」を7月30日に立ち上げます。双葉社といえば、『漫画アクション』や芸能人・AV女優といった多彩な連載陣を有する『週刊大衆』など、サブカルチャーに強い出版社のイメージがあります。そのため、「今までラノベのレーベルがなかったの?」と驚く人もいるかもしれません。
さて、そのモンスター文庫の創刊第1作となるのが本書『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける①』。作者は「某艦娘育成ブラウザゲーム」で"提督業"をしているという横塚司さん。ラノベ作品が数多く掲載されている小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿しようと思い立ち、デビュー作となる本作を書いたそうです。
モンスター文庫の創刊第1作目となるのは、本書のほかにも『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する①』(著・すずの木くろ/イラスト・黒獅子)、『軍師は何でも知っている①』(著・タンバ/イラスト・新堂アラタ)の2作品がリリースされますが、いずれも『小説家になろう』の作品を書籍化。今までも同サイトから、多くの作品がラノベ書籍として刊行していることから、今回デビューする3人もこれからラノベ界の中心となっていく作家かもしれません。
本書のストーリーは、いじめられっ子の主人公、賀谷和久が通っている全寮制の学校ごと異世界に飛び、しかもモンスターと闘う存在となってしまう、というもの。つまり、ロールプレイングゲームの「勇者」になってしまった高校生のお話で、作中でも「レベル」「MP」「パーティ」といった単語が飛び交います。また、モンスターを倒して貯めたスキルポイントを使い「ランクアップ」する場所として「白い部屋」が登場しますが、外のモンスターがいる世界で傷を負っても、そこにいる限りは健康な状態に戻ります。その逆もまた然りであるため、賀谷はヒロインの下園亜理栖に「この白い部屋から出たら、きみはまた処女に戻るわけだ。つまりこの部屋でする限り、ぼくは毎回、きみのはじめてを......」などといった言葉を掛けたりもしています。
イラストはアニメ化されたラノベ作品『ストライク・ザ・ブラッド』も担当した、マニャ子。また、タイトルに『①』とあるとおり、続編も発行される予定です。
ロールプレイングゲームの世界で主人公となりつつ、「萌え」要素も盛り込まれた本書『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける①』。オーソドックスな作品を読みたいラノベファン、あるいは、普段はラノベを読まないという人、どちらも楽しめる作品だと思います。