『となりのトトロ』のサツキが「グレず」に済んだ理由

ジブリの教科書3 となりのトトロ (文春ジブリ文庫)
『ジブリの教科書3 となりのトトロ (文春ジブリ文庫)』
文藝春秋
745円(税込)
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1988年に上映され、いまなお根強い人気を誇るスタジオジブリ作品『となりのトトロ』。2001年9月に発売されたDVDはロングヒットを続けており、オリコン週間ランキングでは、今年6月の時点で通算600週目のランクインを果たしています。

『となりのトトロ』は、昭和30年代の緑溢れる日本の田舎町を舞台に、サツキとメイの二人姉妹と、お化けのトトロとの交流を描いた作品。書籍『ジブリの教科書3 となりのトトロ』では、入院中の母親を見舞うシーンについての秘話が明かされています。

病室で無邪気に母親のもとにかけよるメイと、どこか照れくさそうに近寄るサツキ。そんなサツキを呼び寄せ、母親が髪をとかします。奔放なメイに対し、「良い子すぎる」サツキは「一歩間違えればグレていたかもしれない」と語る宮崎監督は、公開当時のインタビューでこう語っています。

「(制作スタッフの)彼女の母親が病気で、それで子どもに何もしてあげることができなくて、だからその子の髪だけは、病床で話をしながらセッセとといてくれたっていうんです。それが彼女にとっては、ものすごく支えになったっていうんですね」

母親に髪をとかしてもらうことは、サツキにとってグレずにいるための、意味のある行為だったのです。作家のあさのあつこさんも同書のなかで、『となりのトトロ』を「少女の解放のための物語」と呼んでいます。そして、「単なるハッピーエンドではない。サツキが重荷を降ろすための物語」と評しています。

トトロとの交流だけでなく、母と子のふれあいとサツキの成長に注目をしてストーリーを追うと、新しい発見があるかもしれません。

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