サブカルは「終わってしまった文化」? 新しい視点のサブカル批評とは
- 『なんとなく、クリティック〈1〉』
- なんとなく、クリティック編集部
- 1,080円(税込)
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1980年に田中康夫氏が発表し、「クリスタル族」という流行語まで生んだ小説『なんとなく、クリスタル』。それから30年以上たった2013年に、『なんとなく、クリティック』というリトルマガジンが創刊されました。
『なんとなく、クリティック』編集・発行人の森田真規さんは、『なんとなく、クリスタル』を、サブカルチャーについてうまく表現した作品と捉えています。そして、サブカルという文化が「過去の遺物」となった今、サブカルに思いを馳せながら新たな視点を提示する批評の可能性を探りたいと、『〜クリティック』創刊に先駆け述べています。
「"批評"は――未知なものなんてなくなった世界で――既知なものについての新たな"視点"を提示し、"未知"として出会わせるゲームのようなもの」
そのような言葉から始まる本誌は、ミュージシャンで文筆家の山本精一氏を特集。山本氏へのロングインタビュー、佐々木敦さんによる批評などを掲載しています。また、浅野いにおさんの漫画「おやすみプンプン」に対するクロスレヴューや、瀬田なつきさんと染谷将太さんの対談、「完全自殺マニュアル」の著者である鶴見済さんのインタビューなど、現在のサブカルチャーを形成している多彩な作品を取り上げています。
山本精一氏とミュージシャンの小山田圭吾氏による対談のテーマは「未知なる音楽」。ここで小山田氏は、この難解ともいえるテーマに対し、次のように意見を述べています。
「何回でも聴ける曲って、その音楽を自分がきちんと理解できてないからだと思うんです。そういう曲って、やっぱり"未知"っていう感じがしますね」
サブカルという終わってしまった文化に、果たして"未知"はあるのか。批評誌『なんとなく、クリティック』の挑戦は、サブカルチャーを再検証するためのきっかけとなりそうです。