ブスはなぜ嫌われるのか? 酒井順子が鋭く分析

下に見る人
『下に見る人』
酒井 順子
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,404円(税込)
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 『負け犬の遠吠え』をはじめ、女性の心理を鋭く分析し、独特の語り口で世の中に提示するエッセイスト、酒井順子氏。近著のテーマは書名のとおり『下に見る人』です。見た目や自分だけの価値観で誰かと自分を比べて、「私はまだマシ」と判断し、優越感をもった経験が誰にもあるのではないでしょうか。

 著者の体験をもとに、友達にひどいあだ名をつけた小学校時代、ファッションセンスでクラスメイトをランキングしていた高校時代、「金持ちか貧乏か」「美人かブスか」「若い女性かおばさんか」など、24のテーマが俎上に載せられています。

 たとえば、「ブス」の項目では、辛口コメントが炸裂。首都圏連続不審死事件の犯人とされ1審で死刑判決を受けた木嶋佳苗被告を例に、なぜ、これほどまで女性たちがブスを嫌うのかを分析しています。

 「私を含め、中途半端な容姿の人がブスを嫌うのは、『自分とブスの間に、きっちりと一線を引いておきたい』と強く思っているから」だと。つまり、木嶋被告は、自分のブスに気づかず、美人であるかのような犯罪をやってのけたとされ、美人であるかのような態度を貫いている。これは「ブスの領海侵犯」だからこそ、女たちは目くじらを立てるのだと言います。読み手はその鋭い分析に膝を打つでしょう。でも、本書はただ言いっぱなしで終わりません。

 「ブス」のところを「貧乏」や「非エリート」に置き換えてみてください。自分の立ち位置が中途半端だからこそ、自分より少し下の人を「下に見て」安心したいのだと、思えてきませんか。

 著者は、一貫して「下に見たい」という欲求は、日本の病巣だと見ています。そして、あとがきではこう記しています。「人を上とか下に分けずにいられない病が不治のものであるならば、その病の存在を自覚し、表には出さないということが必要なのではないかと、私は思っております。それがせめてものマナーだろう、と」。

 「下に見る」という感情を自覚することが、成熟した大人の社会を形づくる第一歩なのかもしれません。

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