科学の力を以てしても... なぜ毛髪の再生は難しいのか

ビックリするほどiPS細胞がわかる本 ES細胞やiPSといった万能細胞の基礎知識から再生医療の可能性まで (サイエンス・アイ新書)
『ビックリするほどiPS細胞がわかる本 ES細胞やiPSといった万能細胞の基礎知識から再生医療の可能性まで (サイエンス・アイ新書)』
北條 元治
ソフトバンククリエイティブ
1,028円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HonyaClub.com
>> エルパカBOOKS

 美魔女の流行や若返りをテーマにした本が売れるなど、アンチエイジングに関連したものが話題を集めています。これまで以上に「見た目年齢」を意識する人も増えてきたのではないでしょうか。年齢に対抗するための重要なファクターのひとつが、「毛髪」。男女問わず、これをキープすることが若さにもつながります。しかし、日々科学は進歩しているというのに、ことにこの問題に関しては長いこと決定的な解決策が見いだせずにいます。なぜなのでしょうか。

『ビックリするほどiPS細胞がわかる本』によると、これは毛髪をつくる細胞に原因があるのだといいます。

 毛髪を再生させるには、毛髪そのものになる「毛包幹細胞」と、毛髪に色をつける「色素幹細胞」という2つの細胞を再生させなければならないのだといいます。この2つの細胞が協力し合うことによって、初めて毛髪は生まれるのですが、これが難題なのだそう。しかし片方の細胞の再生だけでも、毛の再生例は報告されています。では、片方だけではどうなってしまうのでしょうか。

 広島大学では毛包幹細胞のみを使ってマウスの背中にヒトの毛を生やすことに成功しました。しかし色素細胞は再生させていないので、白髪でうぶ毛のような毛髪しかできなかったそうです。一般に髪の再生で連想するような、フサフサの髪の毛とはかなり違うもので、薄毛に悩む人の救世主となるものではありませんでした。やはり、多くの人の悩みを解決するにはもう少し時間がかかるようです。

 その他、本書では「不老不死は可能なのか?」や「トカゲのしっぽは生えるのに、なぜ人間の指は生えないのか?」などの疑問を細胞レベルでわかりやすく解説しています。このような身近な例で説明されていると、細胞も自分にとってそう無関係な存在ではないと思えてきそうです。

« 前のページ | 次のページ »

BOOK STANDプレミアム