大胆? 『カラマーゾフの兄弟』の続編を日本人女性が書き上げる
- 『カラマーゾフの妹』
- 高野 史緒
- 講談社
- 1,620円(税込)
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第58回江戸川乱歩賞に輝いたのは、高野史緒さんの『カラマーゾフの妹』。なんとあの『カラマーゾフの兄弟』の続編を書き上げた作品なのです。
そもそも、『カラマーゾフの兄弟』には続編がありました。いや、正確にいえば、続編として13年後を描く予定だったドストエフスキーが、それを叶えるまえに亡くなってしまったのです。
『カラマーゾフの兄弟』は、カラマーゾフ家の主人・フョードル殺害の犯人探しが物語の中心となりますが、『カラマーゾフの妹』で描かれているのは、フョードル殺害事件から13年後、カラマーゾフ家の次男・イワンが特別捜査官として故郷に戻ってくるのです。
高野史緒さんが、続編を書こうと思ったきっかけは、前任者の小説のなかに「ある重大な事実」を発見したからです。それは、「続編の布石」。第一部を詳細に検討すれば、スメルジャコフを犯人とするには疑問がある点も、全て書き込まれているというのです。
同賞は応募原稿に対するもののため、二次創作的な同作が受賞作に該当するのかどうかが焦点となりましたが、京極夏彦氏や桐野夏生氏、東野圭吾氏らの審議の結果、見事受賞が決まりました。
審査員の一人、石田衣良氏は、「ミステリーとして読んでも、カラマーゾフ家をめぐるメタフィクションとして読んでも、帝政ロシアを舞台にしたスチームパンクSFとして読んでも、見事におもしろい奇跡的な一作。高野史緒さん、おめでとう。でも、この手はよほど腕がある人しか実現不能なので、応募者は安易に真似をしてはいけません」と、選評を残しています。
『カラマーゾフの妹』は、はじめてカラマーゾフシリーズに手を伸ばす人でも楽しめる、2012年のミステリー界を代表する一冊と言えます。