貫井徳郎氏「3度目」の直木賞候補作『新月譚』は想定外の「ラブストーリー」

新月譚
『新月譚』
貫井 徳郎
文藝春秋
2,268円(税込)
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 第147回直木賞が7月17日に発表されます。3回目のノミネートとなった貫井徳郎氏の作品は『新月譚』。8年前に絶筆した美人ベストセラー作家、咲良怜花を主人公とした物語です。

 新作を書いてもらおうと接触した若手編集者・渡部敏明に彼女は驚きの告白をします。それは「非現実感すら漂う」美しさの裏に隠された秘密。そして、彼女は今まで語られることのなかった小説家になる前の、陰気で"美しくなかった"時代の恋を語りはじめ、絶筆の謎も明らかになっていきます。

 貫井氏というと、ミステリー作家の印象をもっている人がほとんどでしょう。ご本人も今までは、「トリックやどんでん返しにこだわった作品を書いてきた」と話します。しかし、今回は人物描写に力点をおき、凄絶な結末をもったラブストーリーを完成させました。つまり、そこには貫井氏も初めて経験する執筆過程があったのです。

 ミステリーを書くには、最後のトリックにたどりつくまで、物語を構築していく必要がありますが、本作は作者が当初考えていたエピローグとはまったく違うものになったそうです。それは、貫井氏が物語の後半を書いているときに、作家である主人公の「言霊を降ろす」道具になっていたから。作中にもある「蛇口になる」という行為を、貫井氏自身が体験していたのです。

 もちろん、巧みなストーリー展開は健在で、一気に読み進めたくなる魅力ももっている本作。ラブストーリーという音の響きから、甘ったるい小説を思い浮かべて読みはじめると、いい意味で裏切られること間違いなしです。

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