作家・大沢在昌さんが『新宿鮫』を朗読-感情たっぷり・迫力満点

 1月27日、「本好きのための電子書籍のススメ 大沢在昌さんと電子書籍にチャレンジ!」と題されたイベントが東京・新宿紀伊國屋本店で開催された。

 同イベントは、毎回ゲストとして参加する作家と共に、その作家の作品を電子書籍片手に楽しむ読書会。5回目の開催となった今回は、ハードボイルド作家・大沢在昌さんが代表作「新宿鮫」シリーズ初の短編集『鮫島の貌 新宿鮫短編集』をSONYの電子書籍専用端末「Reader」を使って朗読し、作品にまつわるトークが繰り広げられた。

 ブックディレクターの幅允孝さんが進行役をつとめ、大沢さんは『鮫島の貌 新宿鮫短編集』の中の一つ「幼な馴染み」を約10分にわたり朗読。登場人物の感情や情景に合わせて声色を変化させる大沢さんの迫力ある朗読に、参加者は息をひそめて耳を傾けた。同作品には、人気コミック「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の主人公・両津勘吉こと「両さん」が登場する場面もあり、そのシーンになると会場からは感嘆の声が上がった。

 続いてのトークセッションでは、漫画のキャラクターと「新宿鮫」のコラボレーションについて話が及ぶと、「執筆する際、粋な男である『両さん』をどのように文字で表現すればよいか、作品の中で『両さん』と鮫島をどう絡ませればよいか常に考えていました」と大沢さん。また、短編集ではこのような異色のコラボレーションや、スピンオフ的なエピソードを取り扱うことで、主人公・鮫島の新たな一面や普段とは違った表情を見てほしいとも。

 参加者が、直接大沢さんに作品についての質問や感想を述べる機会もあり、次期作品の構想や、「主人公の鮫島は死んでしまうこともありえるのか」と言ったストレートな質問まで上がった。

 また、自身でも「今最も電子書籍に詳しい作家」と言う大沢さん。電子書籍について意見をうかがうと、作家、出版社、取次、書店それぞれの現状や課題について言及。その上で、「多くの作品が日々生まれ続ける中、どんな本を読めば良いか分からない人にとってぴったりなのが電子書籍」とし、「本の市場を拡大させる可能性を間違いなく秘めている」と期待を寄せた。

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