労働力不足なのに転職難...... 「ミドル世代」のキャリアのリアルと生存戦略

いつでも会社を辞められる自分になる
『いつでも会社を辞められる自分になる』
黒田 真行
サンマーク出版
1,760円(税込)
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 「売り手市場」「人手不足」「即戦力歓迎」。こんな言葉が飛び交う昨今の求人市場。ところが、いざ転職活動をしてみると、35歳を過ぎたあたりから「思ったより書類が通らない」「面接にすら呼ばれない」と感じている人はいないでしょうか? 実は今、労働力不足の裏で「ミドル世代のキャリア」は、かつてないほど厳しい局面を迎えています。

 その現実に鋭く切り込んでいるのが、ミドル世代専門転職コンサルタント・黒田真行さんの著書『いつでも会社を辞められる自分になる』です。同書の中で黒田さんは、「35歳以降『5歳ごとに倍々ゲーム』で転職の難易度は上がっていく」と指摘します。黒田さんはこれを「35歳の壁」、そしてさらに進んだ「45歳の断崖絶壁」と表現。経験が豊富でも、年齢とともに採用市場での価値は確実に下がっていく――そんな冷厳な現実が突きつけられます。

 しかし、同書が伝えたいのは悲観的なことばかりではありません。黒田さんは同書で、キャリアを見直すべき「37歳」「42歳」「47歳」から準備をしておくことや、「転職市場で価値の高い人『5つの原則』」などを紹介。ただなんとなく今の会社で働き続けるのではなく、その中で「いつ会社をやめても大丈夫な自分」になっていくことが重要なのだと気付かされます。

 たとえば、黒田さんは「『雇われない意識』が、最強の会社員をつくる」と記します。多くのミドル世代の転職を助けてきた黒田さんは、"雇われているけれど、雇われていないマインド"である「株式会社じぶん」を持っている人ほど、転職に成功していると感じたそうです。

「『株式会社じぶん』とは、自分を一つの会社と捉え、在籍している会社を『取引先』とみなして、この株式会社を経営していく、という考え方です(中略)給与は自動的に支払われるものではなく、自身の努力と能力によって獲得するものだと自覚しているのです」(同書より)

 そしてこのマインドは、「今の会社で必要とされる存在」になる近道でもあります。辞められる状態=逃げる力ではなく、選ばれる力であり、結果的に社内外での評価を底上げする「攻めのキャリア戦略」なのです。

 他にも同書で紹介されている、職務経歴書は「あなたの会社に入社したあかつきには、これだけ役に立ちます」という提案書になるように日頃から成果を記録しておく、副業は自分の力を知るための実験場にする、といった視点は、今の職場に残る選択をする人や、これからキャリアを築く若い世代にも役立つ内容です。

 "いつでも会社を辞められる自分になる"とは、今の会社を離れるための手段だけではなく、会社に頼り切らない"自立したビジネスパーソン"になることの重要性を伝えているように思います。この一冊が、あなたのキャリアを崖から救うヒーローになるかもしれません。

[文・春夏冬つかさ]

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