本田圭佑や長谷部誠、日本代表で高校サッカー出身者がJクラブ出身者より重宝される理由

高校サッカー監督術 育てる・動かす・勝利する
『高校サッカー監督術 育てる・動かす・勝利する』
元川悦子
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 現在、首都圏の各地で熱戦が繰り広げられている第90回全国高校サッカー選手権大会。3回戦を終え、ベスト8が出揃いました。明日、夢の国立競技場を目指し準々決勝が行われます。

 最近の日本代表には、清武弘嗣(現・セレッソ大阪)や吉田麻也(現・VVVフェンロ)、家長昭博(現・マジョルカ)といったJリーグアカデミー出身者が増えています。宇佐美貴史(現・バイエルン)のように、若くして欧州トップリーグに所属する選手もあらわれました。

 しかし、代表の中核をなすのは、本田圭佑(現・CSKAモスクワ)や長谷部誠(現・ヴォルフスブルク)、長友佑都(現・インテルミラノ)、岡崎慎司(現・シュトゥットガルト)ら高校サッカー出身者です。Jリーグの下部組織に所属したエリートたちを大切に育てる環境が整いつつありますが、総勢20万人近い選手を抱える「高校サッカー」も依然として存在感を発揮しています。


 「スーパーの中からスペシャリストスーパーな選手は出にくい」

 こう話すのは、流通経済大柏高校で高校選手権優勝を達成した、本田裕一郎監督です。元川悦子氏の書籍『高校サッカー監督術 育てる・動かす・勝利する』のなかで、Jクラブ出身者と高校サッカー出身者を比較しています。

 「池で泳いでいるたくさんの鯉を見ても、どれが安い鯉か、どれが1億円の鯉かを見分けるのはすごく難しい。でもメダカやフナの中に鯉がいればすぐわかる。高校サッカーもこれと同じで、雑草集団の中にひと際光る選手がいれば目立ちます。本人もエース感覚を持ってプレーできるし、彼の存在が周りにもいろんな影響を与える。お互い助け合い、いい信頼関係も生まれると思います」(本田監督)

 例えば、アーセナルに所属する宮市亮がいい例で、中京大中京といった色んな人間がいる中からでてきたので、海外に行っても物怖じしていない、と分析します。

 高校では朝練がありますし、土日は2部練になることもあります。しかし、苦しい練習も大勢の仲間と共有することで乗り越えることができ、それこそが高校サッカーの醍醐味だと本田監督はいいます。

 「Jクラブ出身者は『うまい』『うまい』と周りに言われて育つからプライドは高いんだけど、体力やメンタル面での弱さを見せる傾向があります。むしろ悔しい思いをしながら奮起することが大事なんです。悔しさや悩みを十数人のエリートと共有するのと、100人の仲間と励まし合いながらがんばるのとは全然違う。優越感や劣等感、ハングリー精神や理不尽な気持ち......。いろんな感情を味わえるのが高校なのだと私は思いますね」(本田監督)

 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督も「学校教育という土台があるから選手の吸収力が高く、代表のような短期活動のチーム作りがしやすい」と、高校サッカーのシステムを評価しています。

 うまい選手だけでなく、下手な選手、強い選手、弱い選手とさまざまな人たちと同じ目標にむかって日々トレーニングを行う、日本の高校サッカーの現状は、まさに「社会の縮図」といえます。放課後での経験はきっと社会人になってからも好影響を与えるでしょう。

 様々な成功と失敗を重ねて育っていく高校サッカー出身者。90回目の高校選手権で、何を経験し、どう感じ、どのように生かすのか。1月9日(月・祝)の決勝戦まで、目の離せない試合が続きます。

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