J-WAVE「BOOK BAR」×BOOKSTAND
アノヒトの読書遍歴 しまおまほさん(前編)
- 『ガールフレンド (P‐Vine BOOKs)』
- しまお まほ
- スペースシャワーネットワーク
- 1,728円(税込)
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絵本代わりの『赤兵衛』。
『女子高生ゴリコ』でのデビューからもうじき15年。今夏に発売した最新のエッセイ集『ガールフレンド』がとにかく素晴らしかったしまおまほさんですが、彼女はいったいどんな読書体験をしてきたのか。その全貌を聞いてみた。
「一番古い本の記憶は、幼稚園に入るか入らないかの頃、父親からもらった絵本です。どういう役割分担になっていたのか、子供の頃、本を買ってくれたのは決まって父か母方のおじいさん。なかでも気に入って何度も読み返していたのは『とうさんおはなしして』と『あなはほるもの おっこちるとこ』でした」(しまおまほさん)
ねずみのお父さんが7匹の子ねずみたちのために7つのお話をする『とうさんおはなしして』は、かえるくんとがまくんを主人公にした『ふたりはともだち』や、どろんこ大好きなこぶたの話『どろんここぶた』などで知られるアーノルド・ローベルの作。一方の『あなはほるもの おっこちるとこ』は、『かいじゅうたちのいるところ』のモーリス・センダックが挿絵を手がけているが、どちらもナンセンスかつウィットに富んだお話が魅力の良作だ。
「普通絵本は一枚絵で字が大きなものが多いですが、小さいながらにそういうのが"子供っぽい"って思っていて。この2冊はやや判型が小さくて、挿絵が小さく字もたくさん。見るところがたくさんあるしひねりも利いていて面白かったんです。絵に質感があるのも好きでした。枕はすっごくふかふかしていそうで、けむくじゃらのねずみの毛はなんだかとても硬そうだったり。あと『マザーグース』を足して、この3つを繰り返し読んでいました」
気に入ったものを繰り返し読む。それがしまおさんの小さな頃の読書スタイル。で、普通の絵本は子供っぽい!なんて、ちょっと大人びた女の子だったしまおさん、漫画との出会いも早かった。
「初めて読んだ漫画は、黒鉄ヒロシさんの『赤兵衛』。成年誌の一番最後にちょこっと描いてあった漫画です(ちなみに現在も『ビッグコミック』『ビッグコミックオリジナル』両誌で連載中!)。父がいつも電車の網棚に読み捨ててある漫画誌を持ち帰って来ていたんですが、だいたい『赤兵衛』が載っていた。幼稚園の頃すごく好きで、一種の絵本のように読んでいました。黒鉄さんの漫画の部分だけ集めたりもして」
絵本感覚で『赤兵衛』、どれだけ渋い幼稚園児......。その後小学校に上がると『少年マガジン』や『コロコロコミック』を愛読する、超漫画好きな女の子に育つ。でも小説は苦手。読みながら別のことを考えてしまって、ページは進めどまったく頭に入ってこなかったんだそう。
そんなしまおさんが、後に自身も連載を持つことになる『オリーブ』に出合ったのは中学生の頃。
「ある時、母親が『オリーブ』と『アンアン』を買ってきて、こういうの読んだら? って薦めてくれたんです。それからは毎月3日と18日のオリーブの日がすごく楽しみで。ファッションだけでなく、文化のことや音楽のこともたくさん載っていて、見たことのない人たちが有名人のようにして載っていることにもすごく好奇心をくすぐられました。細かな服の値段から、モデルさんの、メイクの人、写真を撮ってる人の名前。隅から隅まですべてを情報として吸収していましたね」
また、まさに授業中に『女子高生ゴリコ』を描いていた高校時代、ゴリコでも影響を受けた朝倉世界一や岡崎京子の漫画や、3日と18日の『オリーブ』とも同じくらい夢中になっていたのが『CUTiE』だ。
「『オリーブ』はフリッパーズとかそっち系、『CUTiE』は電気グルーヴが連載を持っていたりして、ちょっととんがっている女の子系という感じでしたね。どっちもすごく好きで、どっちも読者モデルに応募してました。梨の礫でしたけど......」
そうでしたか......。しかし最近の『CUTiE』は随分ギャル化が進んだなぁなんて複雑な思いを抱えつつ、後半へ続く!!
後半では、しまおさんの読書の現在! お楽しみに。
<プロフィール>
しまおまほ
1978年、東京生まれ。漫画家、エッセイスト。高校時代に入御中に配られたプリントの裏に描いた漫画『女子高生ゴリコ』が話題になり、1997年に漫画家デビュー。著書に『タビリオン』『ぼんやり小町』『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』など。近年はエッセイストとしても注目されており、最新作の54篇のエッセイをまとめた『ガールフレンド』も話題
取材・文=根本美保子