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プロレス×映画

プロレス界にも映画界にもいる、ジェネリックな実力派。『恐怖の魔力/メデューサ・タッチ』

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 プロレス界で一度ヒットしたギミックは、後発の同系統ギミックに影響を与えてしまいます。参考程度にイメージを拝借するほか、営業妨害的パクりギミックもあれば、友好的なムードの中でネタとして便乗するパロディギミックなんかもあります。

 映画界でもヒット作品と似たような題材の後発作品が色眼鏡でみられてしまうのはよくあることでしょう。
 今回、俎上に載せる『恐怖の魔力/メデューサ・タッチ』(1978)は、狂信的キリスト教信者に育てられた主要人物が、周囲の心ない言動により自身の超能力に目覚め、大事件を起こす......という設定が、前年の『キャリー』(S・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督)に類似する(幼少期パート含めると『オーメン』『エクソシスト』にも似てる)ことから公開当時、酷評された作品。

 確かに設定は似ていますが、本作の場合、表の主人公はイギリスに研修に来ていたフランス人警部であり、捜査の末に裏の主人公である犯人が引き起こす大災厄にたどり着くという、イギリスらしい推理モノとイタリアの「ジャーロ」的なサスペンス・スリラーを併せた味付け。

 妙にコントじみた効果音に乗せて、誰かが誰かに(銅像で)殴られる冒頭シーンに苦笑いさせられますが、実はこのシーンが複数の伏線。フランス人警部がこの殴打事件の捜査を進める過程で時間を遡り、様々な事実や関係者の証言を得て冒頭シーンにつながっていく辺りは、スリラーモノとしてもよく練られています。
 そもそも本作の犯人は自分の力に苦悩して来たのに対し、超能力云々以上に10代少女の心のゆらぎと自我の崩壊を軸に描く『キャリー』とは明らかに違います。

 また、旅客機墜落と大聖堂崩壊のシーンは、のちにアカデミー視覚効果賞を獲ることになる『エイリアン』や『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』などの特殊効果で知られるブライアン・ジョンソンが担当。
 こういった要素もあってか、後年になって再評価の声も高まっているようです。

 プロレス界でも、80年代後期、北米や日本で人気となったタッグチーム「ロード・ウォリアーズ(ホーク&アニマル・ウォリアー)」を獲得できなかったWWF(WWE)が投入した、「デモリッション」(※)というパクリギミックがいます。しかし、パクリとはいえ、圧勝して自分たちしか目立たないスタイルのウォリアーズとは違う、対戦相手も光らすことができる懐の深い実力派タッグとして評価されるに至りました。

 後半で主人公が無双する『キャリー』が「ウォリアーズ」なら、裏の主人公(犯人)が表の主人公を泳がせつつ、最後にトドメを用意していた本作は「デモリッション」的、なのであります。

 ともあれ、やや盛り込み過ぎな面もありますが、中盤から核心へと進む過程、劇中一切会話を交わさない表主人公と裏主人公が、最後の最後に言葉をつなぐシーンは秀逸。未視聴の方は、なるべく事前に情報を仕入れずに観ることをオススメします!

(文/シングウヤスアキ)

※ 同じ『マッドマックス2』モチーフのギミックながら、ウォリアーズは「赤モヒカン男ウェズ」、デモリッションは「ヒューマンガス」をイメージしている点にも違いアリ。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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