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プロレス×映画

プロレスを題材にした映画シリーズ:プロレス云々以前に珍作界有数の怪作『いかレスラー』

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 プロレスを題材にした映画の中でもジャンル的にレアモノなのに、無駄に知名度の高い作品といえば『いかレスラー』(2004)でしょう。
 巨大なえび(実はしゃこ)が人間とボクシングで闘うイギリス映画『えびボクサー』にヒントを得て、インディ特撮畑出身の国産トンデモ映画の鬼才・河崎実監督が、ウルトラマンのトンデモエピソードなどで映像界に衝撃を与えたトンデモ界の巨星・実相寺昭雄の監修により撮り上げた逸品です。

 特撮色は薄味で、いかとかたことかしゃこ姿の屈強な男がプロレスに興じる、タイガーマスクとかその辺りの真っ直ぐな昭和劇画風作品ですね。そう、斜め上方向に真っ直ぐ。

 主人公(いか)を当時、新日本プロレス所属だった西村修、そのライバルをAKIRA(98年頃から俳優としても活動)が担当。本職プロレスラーが演じたというのも話題となった(ハズ)。あらすじは以下の通り。

 超日本プロレスのIMGP王者決定戦にエース候補の田口浩二が勝利したその時、人間サイズの「いか」が突如出現。そのまま田口をKOした「いかレスラー」の正体は、不治の病により失踪した人気レスラー、岩田貫一だった。
 得意の関節技がまったく効かない「いかレスラー」との再戦を前にノイローゼ気味の田口もまた「たこレスラー」となり、いかたこ対決が実現! さらには「しゃこボクサー」との異種格闘技戦も決まり......

 といった感じですが、実はこのいかレスラーとなる主人公・岩田貫一の設定(不治の病を克服するためパキスタンの奥地で修行し「いか」になった)は、主演の西村本人がベースになっているのです。

 西村は98年に後腹膜腫瘍というガンが発覚するも、インドなどを渡り歩き、座禅や食事療法などによって克服に成功。2000年の本格復帰以降は療養中に学んだ座禅で瞑想する姿が西村のトレードマークとなり、大技を使わない昭和気質のファイトスタイルや、哲学的な言動も顕著に。後年には文京区議会議員に当選するなど、プロレスラーとしては異色の存在になっています。

 実写特撮版『愛の戦士レインボーマン』(これもプロレスラーがヒーローに変身する)から引用した感もありつつ、昭和プロレス好きならニヤリと出来るネタもリスペクトフルなパロディ作品に思えてきますが、そこはあくまで河崎監督特有の出落ち系水増し作品。

 団体社長役にルー大柴がいるだけでB級臭が濃厚ですが、ゲストにプロレスラーの高山善廣が出て来るのは良いとして、ターザン山本や吉田豪といったプロレス界隈で知られた編集者・ライターなどもやけに目立つ形で登場。学芸会とも揶揄されるそのポンコツな出来栄えは珍作耐性を要する可能性あり......いや、間違いなく必要ですね。

 でも試合シーンはさすがに本職レスラーが演じただけに見応えがあるものになっていますし(上半身キグルミですけど)、それにそう、主題歌も西村本人がデュエットの片割れを担当。元師匠の"マッチョドラゴン"藤波辰爾の歌声に迫る絶妙なヨレヨレ具合で、中毒性のあるものとなっていますよ!

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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