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プロレス×映画

【80年代特集!】やる方も観る方もバカしかいなかったAttitude時代のWWEを思い出す『悪魔の毒々モンスター』

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 80年代といえば、玉石混交の低予算B~Z級映画がもんどりうって日本に押し寄せた時代。『サンゲリア』(日本公開は1980年)のルチオ・フルチや『バスケット・ケース』のフランク・ヘネンロッターらが生真面目かつ悪趣味にホラーを追求した一方で、ホラーコメディ界隈で"とりあえず面白ければ良い"を貫いたキャッチーな作風が謎の市民権を得てしまったのが、ロイド・カウフマン率いる「トロマ・エンターテインメント」でした。

 そのトロマの名を不動にした歴史的珍作が『悪魔の毒々モンスター』(1984)。
 スポーツジムの清掃員のもやしっ子メルヴィンがリア充グループによる美人局にハメられ、恥ずかしさの余り逃走したら有毒物質入りドラム缶にホールインワン。だが、毒物まみれになったメルヴィンはマッチョボディの「毒々モンスター(通称・毒々)」に大変身!
 生まれ変わったメルヴィン改め「毒々」は街の悪党をこらしめ始め、全盲の美女サラという彼女までゲット。しかし、「毒々」の活躍のせいで街の利権を貪れなくなりそうな悪徳市長が排除に動き出したことで......というお話。

 いじめられっ子が超人に変身するヒーローモノを下地にしながらも、登場人物はもれなくクズかアホ。勿論B級ホラーのお約束通り意味もなくエロシーンをまぶしつつ、グロい演出と特殊効果・メイクも割りと頑張った結果、一部の熱狂的信者を生み出し、毒々本シリーズ他、多数の派生作品(便乗邦題作品ばっかですけど)が誕生しました。

 「毒々」の人物像は、顔が変形して肌もデロデロだけど、悪人だけをぶちのめし、弱者を助けるというヒーローそのもの。それでいて目の見えないサラが調味料と思い込み、漂白剤をどっさりかけたサンドイッチをすかさず外に投げ捨てるなど、ウィットに富んだ面も人気な模様。

 また、出演者はすべからく三文役者なんですが、低予算の枠内で格闘・アクション(ゴア含む)シーンはやけに頑張っちゃってるのがトロマ作品の持ち味。
 やりたい放題のくせに一応ヒーローモノというラインを死守する辺り、スキットで脱線してもあくまで試合が主役という扱いを守るプロレス興行的価値観に近い気が。

 全体の作風もWWEのAttitude時代(90年代中盤から00年代前半)を思わせるところがあります。毎週のように下着マッチが行われるわ、金網の上から実況席にダイブするわ、マクマホン会長が気に入らない奴を自分のケツにキスさせるわと「面白ければ何でもやる」がモットー。ファンも良い意味でバカに毒されていたので、どんな茶番劇でもやる側と観る側で強引にショーとして成立させてしまう時代でした。

 正直、後半手前のカーアクションで力尽きた感も見える本作ですが、市長のシュールな臓物出し入れシーンと茶番劇極まる大団円からノリノリの主題歌「Body Talk」で強引に逃げ切るあの感覚にバカ負けしたら、すなわちトロマ信者かも!

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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