【80年代特集!】プロレスにおける「大人も魅了出来ないヒーローギミックは大成しない」を地でいくジュブナイルの名作『E.T.』
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80年代映画を原体験した世代とって"ジュブナイル"モノは思い出の1ページという方も多いかと思います。アナログなSFX/VFXが熟成した時代背景もあり『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、子供のみならず大人の視聴にも耐えうるジュブナイル映画が生み出された時代でした。
そのブームの火付け役となり、1997年まで世界最高額だった3億ドルの興収を叩きだしたのが、S・スピルバーグ監督作『E.T.』(1982)です。
アメリカのとある郊外の森に取り残された地球外生物「E.T.」と、それを助けようとする少年たちとの交流、そして別れを描いた物語ですが、ドラえもん映画『のび太の恐竜』(1980年版)がモチーフになっていることで有名。
ちなみに82年当時技術的に不可能だったボツシーンや、監督の意に沿わなくなっていた箇所をデジタル技術でリストアした完全版が、2002年に製作されています(※)。筆者自身このバージョンは未見だったので、今回約20年ぶりの視聴となりました。
一応説明しておくと、E.T.さんは胴長手長で超短足アンバランスボディに皮膚はシワシワかつデカイギョロ眼がキモいお姿。しかし、何故だか温もりのあるアニマトロニクスによるE.T.の表情や手の動きは今観ても良いものです。
最初は「やっぱキメェな!」という印象なんですが、話が進むにつれ、老人と小動物を掛けあわせたような所作のE.T.に不思議と愛着が湧いてくるんですね。
でまあ、お話が進むとE.T.は母星に帰るために英語を習得し、主人公のエリオットらと心を通わせながらスッタモンダする流れ。
そういえばWWEの小人ホーンスワグルも、最初は言葉も話せないブサイクな危険生物扱いだったものの、今では普通に言葉をしゃべるちっさいオッサンとして定着。まさに「E.T.」的愛されキャラになっています(多分)。
自転車で空を飛ぶ名シーンなど、オッサンでも子供心を思い出す楽しい作品ではありますが、一方で監督自身が経験した両親の離婚(父との別れ)がメタファーとして込められているため、実は設定が重いのも特徴。
エリオットは父親が愛人と不倫旅行中で家庭崩壊待ったナシという現実を受け入れようとしないなど、繊細が故にきかん坊な性格付けなのです。
ただ、そんなエリオットだからこそ、E.T.とテレパシーで繋がることが出来たワケで、そこから人間としても成長し、一緒に宇宙に行こうと誘うE.T.に「行かない」と告げ、別れ(現実)を受け入れる構成に、ただの子供向け映画ではなかったんだなぁと改めて理解した次第。
プロレスでも、マックス・ムーン然り、子供向けに特化したギミックレスラーは成功した試しがなく、結局はホーガンやランディ・サベージなど全世代が熱狂出来るレスラーでなければ大成出来ないのと同じこと、かもしれません。
(文/シングウヤスアキ)
※ バスタブでE.T.が空気をぶくぶくさせるシーンや住宅街でのハロウィンのシーンが追加シーンだそうですが、他にも2002年当時の世相に合わせた修正が加えられています。