【80年代特集!】飯塚高史の「J・J・ジャックス」的黒歴史と重なる『ペット・セメタリー2』
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スティーヴン・キングの小説の映像化作品は70年代から多数制作されていますが、それ故に"やっちゃったねコレ的"作品群があります。その中から、ややヒットした感のある『ペット・セメタリー』(1989)の続編にして、模範的黒歴史な『ペット・セメタリー2』(1992)をご紹介しましょう。
キング自身が脚本を手がけた前作は、交通事故死した息子を動物墓地(厳密には墓地の奥にある霊場)で秘術を使って生き返らせた男性に、さらなる不幸が待っていた系のお話。
キング作品特有の田舎街の異質性や土着風習、人が狂っていく過程などツボを押さえた佳作です(雑なホラー描写と後半から大根役者ぶりを俄然発揮する主役など珍作的には良作)。
そして、91年の『ターミネーター2』で時の人となったエドワード・ファーロングを主役に迎えたのが本作。当時のファーロングといえば日本でもカップ麺のCMに出演して話題になった美少年でしたが、本作については、続編あったんかい......というのが正直なところ。
人気女優の母を事故で亡くした少年(ファーロング)が母の故郷(前作の街)に獣医師の父と共に移住する。......ということで「ママが蘇ってアレすんだろ?」と思いきや、本作で核になっているのはなぜか別の家族!
主人公の友達のデブ少年が飼っていた犬が死亡し、墓地の秘術で蘇生。そのゾンビ犬が保安官(デブの継父)を殺害。主人公「よし、保安官も蘇生しよう」......という流れ。その間もやたらデブ少年家族の描写に集中するため、これってデブが主役?と錯覚しかけます。
このゾンビ保安官が中盤から大暴れな展開となっており、前作で保たれていたムード醸成は骨抜き状態。プロレスでいえば、地味ながらテクニックが評価されていたのに、変な衣装や飛び技など使い始めたちゃった「J・J・ジャックス」時代の飯塚孝之(現・高史)といいましょうか。
さらに、前作は主人公も闇に落ちるところまでがカタルシスとなっているのに対し、本作は「ここでのことは忘れよう」エンドになっているため、ただのホラー映画といった印象です(エンドロール前のシュールな思い出写真風演出に吹き出すけど)。
WWEでも似た事象があります。かつては、高さ10m近い足場から直下の資材置場(クッション入り)にダウンする相手へエルボー・ドロップを決めるなど、自爆を辞さない勇気と衝撃がファンの記憶に刻まれた"場外決着ネタ"。しかし最近は自主規制もあり、資材置場に中途半端に投げ捨てて終わりと素っ気ない締めが多く、記憶にも残り難くなっています。
安全性の面から仕方ないとはいえ、中途半端が一番ダメというのは本作にもいえることかも。
色んな意味で黒歴史な本作出演後はヒット作に恵まれず、クスリに溺れてしまったファーロング氏ですが、その汚れたイメージを活かして(?)近年は『CSI:NY』での犯罪者役などで評価を受ける存在に。
鳴かず飛ばずだった飯塚選手も「J・J・ジャックス」という黒歴史を乗り越え、ヒールになってから成功した辺り、何だか似たような境遇を感じますね。
(文/シングウヤスアキ)