【80年代特集!】 80年代のホーガン&MTVブームとリンクする、実は相当な珍作『ストリート・オブ・ファイヤー』
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米ショウビズ界での80年代の転換点といえば81年の「MTV」開局だといわれます。当初のMTVはミュージック・ビデオ(MV)を24時間放送する専門チャンネルでしたが、おかげでイメージビデオ的なものや、楽曲に合わせた内容で俳優やメンバー自身がスキット(小芝居)を演じるタイプのPVが急激に浸透したそうな。
音楽のファッション・ビジュアル化ブームはプロレス界にも波及。80年代半ば、米中南部で人気を誇ったMSWA(ミッドサウス・レスリング・アソシエーション)でミュージシャンのMVを真似たレスラーのプロモ映像が作られ始め、今では当たり前になった入場用PVの先駆けになったそうです。
当然、映画界でも音楽(特にロック)をテーマにした作品が多く生まれた時代でしたが、興行的に失敗しながらも異色の作品となったのが『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)。本作はとりわけMTV向けのMVをそのまま映画にしたような作品とされています。
ストーリー的には、主役となるタフガイのトム(M・パレ)が男勝りの元軍人女性マッコイを相棒に、ギャングに拉致られた元恋人で歌姫のエレン(D・レイン)を救出。逃避行の中で男と女のラヴゲームが再燃しつつ、面目を潰されたギャングのボスと最後に一騎打ち、という西部劇っぽいお話。冒頭でこれ寓話だから!と言い切っているのもポイント。
作風として目立つのはやはり全体に漂うMV(PV)っぽさ。軽快なBGMの曲調に合わせてのカット割りが行われ、場面転換のワイプもどこかMV風。エレンの歌唱シーンも情緒よりもビジュアル主体のMV的演出で、特に中盤の演出が顕著。
街頭のTVにエレンのMVが流れている、その喧騒の中でエレン本人たちが逃げている、それに気付いたファンのひとりが追いかける、何故かそのまま仲間に......まさに80年代のMVにありそうな演出です。
ともかくご都合展開ドカ盛り状態ですが、最後は綺麗にまとまって、ギャング団とストリートの住人が睨み合う中、トムがボスとの一騎打ちを受けて立つというクライマックスへ。
みんなが期待してる必殺技で締めれば許された80年代の典型的パワーレスラーの試合展開と合致しますね。
実際、そのひな形となったハルク・ホーガンの80年代の爆発的な人気はMTV出演がキッカケ。ホーガンの細かいことは気にしない陽性なキャラと、最後に豪快にレッグドロップを決めて勝つ単純明快なスタイルがMTV(で流れた、なんだかわからんけど記憶に残るMV)と共にこの時代に受けたのでした。
何故か日本では名作扱いの本作ですが、本コラム・80年代特集の中では、珍作度数高めな逸品として推挙したい作品。尚、見終わってみるとどこのストリートがファイヤーしたんだよという疑問がチラつきますが、炎上シーンはいくつかあるから許してあげて!
(文/シングウヤスアキ)