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プロレス×映画

【80年代特集!】"あれだけは良かった"で語られる泡沫レスラー的怪作『スペースバンパイア』

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 一部の人気選手(ギミック)以外は、派手な入場シーンや本人より人気のペット、はたまた竹刀やミミズなどの武器といった、最も印象的な点のみで記憶されてしまう選手が大多数のプロレス界。
 映画の世界にも"あれだけは良かった"的作品があるかと思いますが、今回のお題『スペースバンパイア』(1985)もそのひとつだとか。
 ちなみに今回から数回に渡って特集する「80年代映画」の1本目。

 原作SF小説を大胆に改変したという本作は、ハレー彗星調査船が彗星付近に漂う謎の宇宙船を発見し、人間そっくりの生物が眠るカプセル3つを回収するも、その生物は宇宙バンパイアだった......というお話。

 監督は『悪魔のいけにえ』など映画史に残るホラーをヒットさせたトビー・フーパー、脚本はダン・オバノン&ドン・ジャコビーの『エイリアン』脚本家コンビ。さらに『ティファニーで朝食を』『ピンクパンサー』などの音楽を手掛けたヘンリー・マンシーニという陣容。製作は80年代アクションの大家「キャノン・スタジオ」(※)。

 SFホラーでオバノンといったら、『エイリアン』の片鱗を期待しちゃうワケですが、そんなものはない。ないんです。
 最大の売りは女バンパイアを演じるマチルダ・メイの全裸(DVDの版によっては下の方も無修正)。もっといえばオッパイ。これが本作を語る時の"あれだけは良かった"なのである!

 プロレスでいうなら入場だけが印象的な出落ち系。
 90年代の全日本プロレスで、入場時にビーチボールを客席に投げ込むだけの選手だったサニー・ビーチ。WCW初登場時に壁をぶち破って登場直後、ずっこけてマスクが外れ正体がバレたショック・マスター。近年なら、入場時に当人より取り巻きの方が目立っているWWEのアダム・ローズ辺りにおける"あれだけは面白かった"と同義でしょう。

 さておいて、色々あって地球に移送後、目覚めたバンパイアたちが脱走。女バンパイアに心奪われる調査船船長の暴走気味な言動に「どうせこの事件全部こいつのせいだろ」などと、思ってたら街中感染したバンパイアだらけになり、なにがなんだか状態に。

 まるで「オバンバ」なカピカピバンパイアや感染者祭り(見た目と動きがどうみてもゾンビ)は同年公開の『バタリアン』のパイロット版的でもあり、後半からはフーパー監督の超常演出も激化。とかくバタバタした展開は、作品の印象を散漫にしてしまっている節が無きにしもあらず。
 プロレスでも下手に技数の多い選手は逆に試合の印象が薄くなるものです。

 とはいえ、80年代らしい職人技の光るSFXも楽しめるし、全裸女異星人が男を求めて放浪するのはエロSFホラー『スピーシーズ』の源流といえるもの。3体のオリジナル異星人(吸精鬼)が人間に寄生するのは『ヒドゥン』『パラサイト』などの寄生パニックモノに先駆けた表現でしょう。
 ほかにもSFやパニック映画のテンプレ要素を盛り込んでいるので、オッパイ目的ついでに参考本感覚で観ても良いかも。ただし、「は?」となること確実なオチについては深く考えないように!

(文/シングウヤスアキ)

※ イスラエル出身のヨナヘム・ゴーランの製作スタジオ。筆者のお気に入りのチャック・ノリス作品『デルタ・フォース』のほか、ブロンソン、スタローン、ドルフ・ラングレンなど肉体派アクションスターの作品群で知られます。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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