「レフェリーに反則行為がバレなきゃOK」的結末が見事な『俺たちスーパーマジシャン』
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映画やアニメなどの「対決モノ」では、旧態依然の正統派と新たな亜流派の対立構造が描かれることがあるかと思いますが、『ベスト・キッド』然り、結果的に基本に忠実な正統派が最後に勝つことが多い気がします。
しかし、中には「どこが正統派やねん!」という"反則"的手段に出るケースも。
今回はその"反則"パターンの作品、ショービズの本場ラスベガスを舞台にした、正統派マジシャンの転落と復活を描いたコメディ『俺たちスーパーマジシャン』(2013)がお題。
主演にスティーヴ・カレル、相棒役にスティーヴ・ブシェミ、そしてライバル役にジム・キャリーという濃い目のキャストが筆者好み!
いじめられっ子の少年バートは、有名マジシャンの教則ビデオを観てマジックを覚えると、同じ境遇だったアントンと友達になりコンビを結成。成長した2人はラスベガスで売れっ子イリュージョニストに!
ところが10年後、新進気鋭のマジシャンの出現により、人気は急下降。不仲からコンビは解散し、ホテルとの専属契約も終了。栄光の生活から転落したバートは、藁をもすがる思いで老人ホームの慰労芸人の職に就くと、そこにはあの教則ビデオのマジシャンが......というのがあらすじ。
インテリやナードな役が多いS・カレルにしては珍しいヤリチン系の主人公バートは、マジックは正統派だけど、アシスタントやファンの女性をヤリ捨てまくり、自分たちのマジックに飽きたイライラを相棒にぶつける典型的クズ野郎。
そして全てが裏目に出る自業自得の転落劇の中で、決定打となるのが、J・キャリー演じるグレイの登場です。
そのグレイは、マジックよりも体を張って何かに耐える大道芸系パフォーマー。おしっこを(12日間!)我慢したり、焼いた石炭の上でジュージューされながら寝たりと、話題になるためなら手段を選びません。
プロレスでいったら、バートは熟練の試合運びで競い合う正統派の選手。一方のグレイは、リングに敷き詰めた折り畳みイスやテーブルに自爆気味に突っ込んだり、自分でバラ巻いた画鋲の海に(反撃されて)叩きつけられるなど、邪道な選手(サブゥーや大仁田厚などの自爆系)。
好みの差はありますが、インパクトでは後者に軍配が上がるのはプロレスも本作も同じでしょう。
また、デビッド・カッパーフィールドら有名マジシャンの協力もあって序盤は現実的な正統派マジック&イリュージョンが満載......なんだけども、グレイが出て来た辺りから非現実的な"ファンタジー"対決の様相に。
グレイの各我慢パフォーマンスシーンを始め、ラストの「観客を消すイリュージョン」では、現実でやったら訴訟モノな"反則技"が炸裂!
ただこれはいってみれば、プロレスにおける反則技の「レフェリーにバレなきゃOK」(暗黙の)ルールに近いかも。
話のスジ的には、ホッコリ感動コメディの王道展開ですが、中盤以降のブラックな笑いが楽しめる方なら、お気に入りの1本になるやもしれません。
(文/シングウヤスアキ)