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プロレス×映画

プロレスラー出演映画シリース:ザ・ロックの初期主演作『ワイルド・タウン/英雄伝説』

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 本コラムでもお馴染みのドウェイン・ジョンソンが『Forbes』誌による2014年度・最も稼いだ俳優ランキングで、ロバート・ダウニー・Jr.に次ぐ2位(約53億円)に輝いたそうな。俳優業本格進出から約12年ともなれば、WWE看板トップスター「ザ・ロック」としての前歴を知らない世代も増えているそうです。

 そんなロック様も初期主演作品はWWE製作のものがほとんど。レスラーとしては飛び抜けた表現力を持っていたものの、世間的には「WWEのザ・ロックが俳優をやってる」という域を出ていませんでした。
 今回ご紹介するのはその頃の1本、『ワイルド・タウン/英雄伝説』(2004)。実話を基にした骨太アクション『ウォーキング・トール』(1973)のリメイクです。

 久々に地元に帰ったら、警察は腐ってるし、暴力とドラッグに支配された街になっとる! 文句言ったらフルボッコにされてマジファッキンだから、ワイが保安官になって汚物を消毒してやるって! というのがザックリしたあらすじ。

 ロック様演じる主人公は保安官となるや、先代保安官とその部下全員を解雇しちゃうんですが、当然汚れた方々は逆恨み。主人公の実家を襲撃する一方、パトカーを爆破、軽機関銃で保安官事務所を蜂の巣に! まあ主人公一派に簡単に全滅させられちゃうんですけども。
 そしてシーンは閉鎖された製材所へと急に飛び、街を腐敗させる原因を作った旧友との対決へ。しかもあっさり決着が着くので、真の黒幕登場の流れかな、と思ったらそこから何事も無くハッピーエンド&エンドロールへ。ってこれで終わりかい!

 筆者自身は1973年のオリジナル版は未見のため下調べした範囲ですが、一応オリジナル版をなぞってはいる模様。劇中で主人公のトレードマークとなる角材を削った棍棒は、WWE製作ということで(角材がトレードマークの)ハクソー・ジム・ドゥガンのオマージュかと思いきや、オリジナル版由来なんですね。

 ただ、基の実話の時点で「元プロレスラーの怒れる保安官」ということで、オリジナル版は肉弾戦がほとんどだったようですが、本リメイク版では現代風にアレンジされています。
 特に銃撃戦が盛り込まれたせいか、本物のレスラー出身のロック様が「元軍人」を演じるという何とも本末転倒な設定に。
 そりゃ元レスラーより元軍人の方がリアルなヒーロー像なんだろうけど、WWE製作である以上、プロレスに誇りを持って肉弾戦寄りに作って欲しかったかも。

 ノワールとしては少々、負の描写が足りないことや、都会育ちのロック様よりも、まさしく南部の怒れるオヤジなスティーブ・オースチン向きの題材だった気がするのも確か。とはいえアクション要素がコンパクトに詰まった内容なので、気軽に楽しめる作品になっております。

(文/シングウヤスアキ)

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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