連載
プロレス×映画

プロレスで若手がベテランの相棒を裏切るよくあるパターン、かと思いきや......な名作『スティング』

スティング [Blu-ray]
『スティング [Blu-ray]』
ジェネオン・ユニバーサル
2,037円(税込)
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 珍作・カルト作続きな本コラムですが、第46回(1974)アカデミー賞6部門を制覇した、ポール・ニューマン、ロバート・レットフォード共演の名作『スティング』(1973)でまともな映画観を取り戻します!
 大筋は師匠を殺された詐欺師の復讐劇ですが、信用詐欺を題材にしたジャンル"コン・ゲーム"の代表作としての方が有名です。『オーシャンズ11』シリーズや『シェイド』、『グランド・イリュージョン』など緻密な計画に基づく詐欺・強奪モノですね。

 ケチな詐欺師フッカー(R・レットフォード)は、師匠とのコンビで通行人を騙して金を奪うも、その金はギャングの賭博場の売上金! 師匠は殺され、自身の身も危険に。そこで師匠の親友で伝説の詐欺師であるゴンドルフ(P・ニューマン)を頼りに、ギャングへの復讐計画を開始。しかし、不測の事態が続き......
 とまあ、この手のジャンルの教科書的作品として知られます。

 フッカーは当初はポンコツな詐欺師として描かれますが、ゴンドルフの教えで詐欺師として急成長。
 一方、堅気に戻っていたゴンドルフは、親友の仇討ちのため現場復帰。古い仲間を集めつつ、フッカーを詐欺師として鍛え上げると、ニセ賭博場でギャングのボス・ロネガンをイカサマでハメて負債を作らせる計画を実行します。

 それをキッカケにロネガンからさらなる金を引き出す作戦が進むものの、ロネガンから送り込まれた殺し屋や悪徳警官の横槍など不測の事態に陥ったフッカーがゴンドルフを裏切り......てな感じで最後の最後まで騙し騙されな展開へ。

 若手が師匠格を裏切る展開は割りと定番ですが、このパターンはプロレスでも定番。
 ルーキーの教育係としてベテランがパートナーに起用されると、ルーキーが次第に増長し始め、ベテランを裏切るまでがほぼお約束です。近年のWWEでいうとコーディ・ローデスのパターンが浮かんできます。

 ベテランのボブ・ホーリーに弟子入りしたコーディは、得意技を教わり、ホーリーと共にタッグ王座も獲得。しかし、テッド・デビアス(Jr.)&謎のパートナーの挑戦を受けた際、この謎のパートナーがコーディ自身だったというカラクリ(つまり、王者の立場からその場でデビアスとのコンビを組み挑戦者となり、再び王者に)で師匠ホーリーを裏切ったのでした。
 ちなみにコーディの裏切りと本作の裏切りのオチは違うのでご注意を。
 
 本作は時代設定が1930年代ということもあり、競馬賭博の描写(電報中継を軸に騙しが成り立っているため)にカルチャーショックを受ける方もいるかもですが、中盤からの観る者を欺く巧妙な脚本はとにかく見事。テーマ曲の「ジ・エンターテイナー」を含めアカデミー賞音楽賞も納得の、耳にするだけで楽しくなる楽曲の数々も魅力なので、有意義な暇潰しには持って来いの1本です。女優陣は味のある残念フェイスな方しか出てこないけども!

(文/シングウヤスアキ)

« 前の記事「プロレス×映画」記事一覧次の記事 »

シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム