プロレス軍団抗争でよくある、段取りで進む80年代風ベタホラー『ディテンション』
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80年代ホラーこそ珍作映画の至高のジャンルといっても過言ではないと思う筆者ですが、現代における"80年代風ホラー"となると、超絶低予算インディ映画というのが関の山。でも中には佳作ホラーもあるはず!
てことで、パッションと勢いだけが生き甲斐さ的な80年代ホラーの遺伝子を引き継ぐ作品『ディテンション』(2006)が今回のお題。
監督は、尼さん蛍光色ゾンビが大暴れするタランティーノ風トンデモホラー『ザ・コンヴェント』で、一部の愛好家から高評価を受けるマイク・メンデス(※)。ベタネタを重ねに重ねる80年代ホラーリスペクトな作風とあって、本作もすべからくしてベタづくし!
友人の葬式で久々に集まった仲間たちが故人を偲び、真夜中の墓地(テンプレ1)でダンシングフィーバー。墓の住人たちが激おこ状態となり、様々な怪奇現象が発生(テンプレ2)したため、超常現象研究家を頼って厄祓い儀式を実行(テンプレ3)。ところが怪奇現象は収まらず(テンプレ4)、研究家の屋敷に籠城することになるも......という流れ。
元カノと墓場でキスして、嫁は女の勘で嫉妬。キスをバラした男友達は昔からその元カノが好きだった、てな具合に人物相関図もベタ。
出て来る悪霊のほとんども俳優さんが(顔だけ)特殊メイクしてるだけという直球型だし、干からびた死体がフガフガと襲ってくるシーンの作り物感と開き直り感なんてもう『死霊のはらわた』風です。
しかも、悪霊避けアイテムが出て来るワケでもなく、主人公たちは逃げて叫ぶだけ。反撃らしい反撃があるのはクライマックスのみという清々しさ。
ベタ要素の多さからしてプロレス的といえますが、特にプロレスっぽいのは、無駄に丁寧な悪霊の襲い方と行動倫理。
ストーリー進行の都合、綺麗に抗争相手が分かれるのは軍団抗争でよくある段取り。
前哨戦カードは「主人公&嫁 vs. 斧殺人音楽教師」、「主人公の元カノ vs. 強姦判事」、「男友人 vs. 放火魔ボーイ」。本番対決は「全員参加エリミネーション(敗者脱落)式タッグ戦(寝返りアリ)」といった感じ。ちなみに超常現象研究家と助手は時々救援に入るセコンド担当です(後半に道連れ参戦!)。
また、ストーリーが投げっぱなしになりがちなホラー映画ですが、本作は悪霊たちが襲ってくる理由と対策が簡潔に説明されるので安心!
抗争ストーリーを選手たちがマイクでわざわざ言葉にして観衆・視聴者に周知させるWWE的な筋立てに似ています。
主人公に『プリズンブレイク』のリンカーン役で知られるドミニク・パーセル、超常現象研究家役にフランス出身の名脇役チェッキー・カリョを起用しているので、多少安心して観られるのもポイント。
CGI予算を一気に注ぎ込んだと思われる、巨大顔面との追走劇と巨大ハンド捕獲シーンの珍妙クライマックスは「バカ映画観たなぁ」とニッコリ出来る内容となっております。
(文/シングウヤスアキ)
※2013年には最新作『Big Ass Spider』なる巨大クモパニックモノを製作。ジェフ・リロイ監督といい、この界隈の人達はホラーの次はクモ映画を撮らないといけない縛りでもあるの?