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プロレス×映画

元NBA大物スター、ロッドマンのプロレスデビューが思い出される『トリプルX』

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 "人寄せ"を商いとするプロレスでは、話題性重視で異業種の大物をデビューさせる奇策を打つことがあります。他種目のスポーツ選手、果ては芸能人も対象になることも。
 そこで今回のお題はヴィン・ディーゼル主演のスパイアクション『トリプルX』(2002)。プロレス界におけるとある"異業種からの即デビュー事例"が脳裏に浮かぶ作品です。

 本作の主人公ザンダー(V・ディーゼル)は、違法なエクストリーム・スポーツ(モロクロスやスケートボードのほか、盗んだ車で橋からダイブしてパラシュートで脱出など)のスーパースターにして、修羅場を潜り抜ける天性の素質の持ち主。
 その類まれな才能がNSAの偉い人(サミュエル・L・ジャクソン)の目に留まり、新人スパイとしてスカウトされます。

 前任者が殺されたってのに大した疑問も抱くことなく、その場のノリで呑気に細菌テロを企むチェコの犯罪組織に即潜入しちゃうザンダーさん。ちなみに彼がスパイ仕事を請けたのは、車窃盗の前歴帳消しのため。
 普段から命の危険に晒され過ぎて感覚が麻痺しているのか、犯罪歴が残る方が俺的にはナシ!みたいなことなのか......さすがは規格外新人ですね。

 物語半ばで正体がバレて潜入作戦失敗も、ザンダーは組織の美女(実はロシアの潜入スパイ)を救うべく、独自に行動を開始。結果的にテロの危機を回避しちゃう即戦力過ぎるザンダー師匠だけども、銃火器の扱いだけは不慣れだったり、クライマックスでアワアワしたりと、ギリギリ新人っぽさをキープしています。

 一方、プロレス界で異業種からの即デビュー事例といえば、NBA大物スター選手だったデニス・ロッドマン。問題児と揶揄されたDQNな性格に加え、2メートル・100kgの身体とあれば、確かにレスラー向き。
 しかもロッドマンのプロレスデビューはバスケ選手として現役中とあって話題性は抜群のこと。ちょうど96-97年シーズンを出場停止となったため、暇だからプロレスやっちゃおっかな的な流れで、ハルク・ホーガンの友人としてトントン拍子にWCWでの試合に出場することに。

 これに味をしめたのか、翌年のシーズン後にも再度プロレスに参戦。同じくNBAのスター選手カール・マローンと(タッグ戦で)プロレス対決を行っています。

 ただ、本作主人公のザンダーさんに新人らしい箇所もあったように、ロッドマンの場合もノリでプロレスデビューした程度なので、レスラーとしては新人以下レベル。真っ当なレスリングファンからはショッパイ事例として記憶されているようです(※)。

 ショッパイといえば、本作の売りであるエクストリーム・スポーツを意識したスタントシーンは、えらく雑な合成のせいで概ね失笑を禁じ得ない珍妙なモノとなっており、別の意味で必見ですぞ!

(文/シングウヤスアキ)

※ロッドマンの映画デビュー作となった『ダブルチーム』(1997、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演)では、同年度のラジー賞3部門制覇。映画界でもショッパイ伝説を残しております。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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