親バカゴリ押しコンビ vs. 自分の持ち味を見失った元スター選手による超絶凡試合的『アフター・アース』
- 『アフター・アース [DVD]』
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ファミリービジネスの傾向が強いプロレス界は親の七光がまかり通る業界ですが、ハリウッドの代表例といえば、ウィル・スミスとその息子ジェイデン君。
ジェイデン君は8歳の時に父との共演作『幸せのちから』(2006)でデビューし、『地球が静止する日』(2008)で賞も獲得。ところが、初主演作のリメイク版『ベストキッド』(2010)のテーマ曲を担当したジャスティン・ビーバー(お騒がせセレブとしても有名)との交友や父の影響で音楽方面に手を出した辺りからアレレな人物として注目の的に。
案の定「親バカも大概にしろ」という世論が醸成され、2013年度のラジー賞・最低主演(息子)・最低助演(父)・最低スクリーンコンボ賞の3部門を制覇したのが、今回のお題『アフター・アース』(2013)です。
1000年前、環境破壊が進んだ地球を捨てた人類は、移住先の惑星の先住エイリアンが放った殺人生物兵器「アーサ」との苦闘の末に居住区を確保。その立役者であるレンジャー部隊の将軍サイファ(ウィル)は、妻から親子関係修復を勧められ、引退前の最後の訓練任務に息子キタイを帯同する。
ところが、赴任先の惑星へ向かう途中で小惑星嵐に遭遇。緊急ワープしたら目の前にはかつての地球が!
結局墜落しちゃって生き残ったのは親子のみ。しかも無傷なのはキタイだけ。今の地球は極端な気候と危険動物てんこ盛りで、挙句、訓練用に連れて来た「アーサ」が逃亡しちゃってさあ大変。
そんな過酷な条件の中、ひとりで救難信号を発信しに行くことになるキタイ=ジェイデン君。序盤は父に言われる通りに進むだけで、ジェイデン君の強烈なヘタレ顔も相まってイライラして来ますが、中盤から父に反発して独り立ちし始めます。
プロレス界の七光り(悪例)で真っ先に思い出すのが、日本でも知られる名選手リック・フレアーの長男デビッド。父が敷いてくれたレールに乗ってWCWデビュー。
本作同様、デビッドも父に反発する筋書きで独り立ちを狙ったものの、これまたオーラ皆無のヘタレな選手で、当人の実力不足が祟り失敗しました。WWEがWCW買収時に引き取った若手選手の1人として移籍を果たすも1年足らずで解雇に。現在は半ば引退状態にあります。
勿論、本作では独り立ちに成功しますが、地球である必然性が薄い設定面の弱さ(過去の文明の痕跡が一切出て来ない)や既視感を覚える展開など、M・ナイト・シャマラン監督作品だという事実に驚愕するレベル。
『エアベンダー』の大爆死で「得意技ナシでも俺はヤレる!」と意固地になってしまったのか不明ですが、得意の"どんでん返し"ナシの展開は、まるでお気に入りの選手の得意技が出る前に終わってしまった凡試合のよう。
自分も目立ちたい親バカ&俺様最高な七光りゴリ押しコンビ vs. 自分の持ち味を見失った元スター選手がふてくされてジョバー(ヤラレ役)を担当したタッグマッチのような本作。珍作以上に視聴後の徒労感が大きい作品かもしれません......。
(文/シングウヤスアキ)