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プロレス×映画

裏庭レスリングのド素人感と枠にハマらない熱意を備えた低予算ゾンビ映画『コリン LOVE OF THE DEAD』

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 超低予算でも賞を穫れる映画が作れるもん!なんて夢物語を現実に実現させたのが、イギリスの無名クリエーターによる『コリン LOVE OF THE DEAD』(2008)。
 僅か45ポンド(当時約6000円)の製作費で作られた、終末感漂うロンドンを放浪するゾンビの悲しいロードムービー、ということが評価され、レインダンス映画祭(イギリスのインディ映画祭)などで複数の賞を獲得。日本でもゾンビ映画好きの間で話題になった模様。

 キャストとスタッフはノーギャラ。エキストラも衣装持ち寄りでSNSで募集して45ポンドに抑えたそうですが、内訳はエキストラへのお茶菓子、DVテープ数本に、重要な小道具となる金鎚だそうな。
 内容は、ゾンビになった若者コリンが、人としての僅かな記憶に導かれ、どこかに戻ろうとするのだが......てな話。困難続きの放浪の末に悲しい事実が明らかになる流れ。

 ただ、ハンディカメラだけで撮ったその映像はほぼ全篇でブレッブレ。逆光入りまくりかと思えば、光量不足で目が潰れそうなほどコントラストがおかしかったりと、かなり人を選ぶモノ。
 コリンが街を放浪するパートはエキストラの熱意で溢れているものの、ゾンビ映画の素養がないとナニコレ状態。ゾンビも伝統型(※)故に喋ることもないから「こいつどこ行くねん!」とイライラはMAX!

 しかし、後半から叙情的なBGMに乗せて悲しい現実が描かれ、最後には「そういうことね」と腑に落ちる作りは「へぇ、やるじゃん」と思わせてくれました。

 この素人感丸出しでも熱意だけは確かに感じる本作を観ると、「バックヤード・レスリング(以下、BYW)」が浮かんで来ます。

 BYWとは、欧米における自宅の裏庭や空き地での"プロレスごっこ"。
 しかし初めは単なる"ごっこ"に過ぎなかったものが、90年代後半、WCWとWWEによる視聴率戦争で過激化したプロの試合を観た影響か、2階の窓や屋根からマットも何も無い地面に寝た相手にボディプレスをかますなどプロ以上に過激化。
 実はBYW出身でハードコアプロレスの申し子ミック・フォーリーが80年代の時点で"飛んでる例"もありましたが、これが当たり前レベルになってしまったのです。

 何かと真似したいお年頃の10代男性を中心に全米各地でBYW団体(草野球チームの感覚)が発足し、先祖返り的にリングを使った本格派団体や、日本のインディシーンで多用された有刺鉄線や蛍光灯を使ったデスマッチを真似する団体まで登場しました。

 ビデオに録画して自分たちで楽しむというBYWの文化的背景から次々に独自映像が生み出されると、それらを紹介するTV番組やDVDだけでなく、ビデオゲームまで作られる一大コンテンツに成長していきます。

 それらの映像は個人が撮影したものなので、画像はブレブレ、カメラアングルもおかしいなど視聴に困難が伴う映像がほとんど。しかし、下手なプロより危険で過激なことをやっているという部分で、本作『コリン』と重なるのです。

 2010年開始の海外ドラマ『ウォーキング・デッド』に先駆けた"愛する人のゾンビ化"にまつわる心理描写など注目に値する要素もあるので、気になる方はブレブレ映像を覚悟してチェックしてみては如何でしょうか。

(文/シングウヤスアキ)

※ゾンビ映画の始祖たるジョージ・ロメロの作品の中で扱われる「遅い」「喋らない」「人を食う」という原則に沿った仕様のゾンビ。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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