異業種セレブが小遣い稼ぎでプロレスリングに登場する悪例と重なる正統派珍作『スティール』
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元来、TVと結びつきの強いプロレス。全米各地を巡るWWEともなると映画・ドラマ出演者や地元スポーツチームの選手がゲストに招かれますが、リング上で選手と試合までするとなると「これは何の冗談だい......」となるケースも。
2006年、WWEで展開されたブリトニー・スピアーズの元夫ケヴィン・フェダーラインとトップスター・シナとの抗争は、素人(芸能面でも「ブリトニーの旦那」というだけの一発屋)が数ヶ月に及ぶ抗争に絡んだこともあってレスリングファンから総スカンを食った悪例として知られます。
映画界でも異業種セレブが主演を務める"悪例"が多々あるけれども、今回のお題『スティール』(1997)は、コミック原作実写映画にして、主演が人気スポーツ選手という、字面だけで「これアカン奴や」とわかる事故物件!
※ご注意。作品画像は映画『スティール』のものではありません! シャキール・オニールのプレイなどが収録されたDVDです。
主演は当時NBAの看板スター選手だった"シャック"ことシャキール・オニール。目立ちたがり屋と揶揄される人物像からして、いかにも小遣い稼ぎで飛びついた感じがイイ!
そのシャック演じる「スティール」は、スーパーマン作品内でデビューした、自ら開発したパワードアーマーで闘うアフリカ系アメリカ人天才技術者というキャラ。DCコミック版アイアンマンですかね。
原作エピソードを土台にしながらオリジナル展開となる本作のあらすじは......
軍で兵器開発に携わるジョンは、功名心の強い共同開発者バークの暴走によって起きた実験事故を機に退役。ところがある時、事故を起こした兵器を使ったと思われる銀行強盗に偶然遭遇。責任を感じたジョンは、事故で下半身不随になった元同僚女性スパークスと叔父さんの手を借りて、パワードアーマーを開発。鋼鉄の鎧を纏ったヒーロー「スティール」として、強盗団と彼らを影で操るバーク退治に乗り出す! という内容。
肝心の「スティール」の出来栄えですが、鋼鉄に見えないテロンテロンなアーマーに、自慢の武器は市販品に色塗っただけみたいなスレッジハンマー(でっかい金鎚)。さらにシャック自身のユルイ演技も相まって木偶の坊感がまぁ凄い。
ちなみにスレッジハンマーは音波衝撃やレーザーを放ったり磁石装置にもなるんですが、殴る時も鎚ではなく柄の方で攻撃するという謎さ加減。
WWEでもコワモテ系のトリプルHがスレッジハンマーを"お気に入り武器"として使っていますが、実はこの人の場合もほぼ柄の方で攻撃するのです。人を殴る時は危ないから柄の方で、的なやさしい共通性に思わずニッコリ。
筋書きやイメージ的にも『ロボコップ』が浮かぶものの、全編通して緊張感皆無のユルくて陽気なテンションなのでハラハラする場面はゼロ。1998年のラジー賞最悪男優部門にノミネートされ、某トマトサイトで批評家12%、ユーザ17%の評価を受けたことがよくわかる正統派珍作でした。
(文/シングウヤスアキ)