予想通りを本当に実現するプロレス的カタルシスに通じる近代カルト快作『シャークネード』
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「本気でバカをやる」というのはプロレスの本質ともいえるものですが、映画でも思い切りの良い珍作はカルト作として評判になったりするもの。
てことで、「安っぽさ」は当然として、予想通りの「ベタ演出」、直球狙いの筈が斜め上に飛んでいく「ご都合展開」の『シャークネード』(2013)が今回のお題。
珍作TV映画を数多く垂れ流す放送局「Syfy」(WWE看板番組のひとつ「SmackDown」を米国内で放送する局でもある)オリジナル作品として2013年7月に放送されたのが本作。製作はパニックモノやモンスターモノを中心にB級作品を乱造する珍作専門スタジオ「アサイラム」。いわば珍作黄金コンビです!
内容は、大型ハリケーンによってメキシコ湾洋上から巻き上げられたサメの大群が、そのハリケーンと共にLAに上陸しちゃうぜ!という代物。
要はアサイラムお得意のB級CGIを駆使したパニックムービーですが、ハリケーンで破壊された建造物が凶器と化したり、街に上陸したサメがまさかの空間で襲い来るのだけども、「いやいや、まさか、それはないでしょ......予想通りかよ!」みたいなベタ展開目白押しが売り。
そのバカ映画っぷりがTwitter上で評判を呼び、放送後早々に続編製作も決定。珍作界のニューウェーブとして話題になったのでした。
序盤は主人公たちがハリケーンに逃げ惑うついでにサメに襲われる淡々とした展開。LAに対するサメの侵攻も高波による洪水が原因なので、あり得なくもない筋書きです。
しかし、中盤を超えるやマンホールから元気よくサメが飛び出す(ショットガン一発で瞬殺)などアクロバティック・シャーク・シーンが本格開幕!
プロレスでいえば、腕関節狙いの一点攻撃でじっくり進んでいたかと思ったら、それまでの流れをスルーして大技合戦に雪崩込む、流れぶったぎり試合展開に似ています。
さらに案の定過ぎてニヤけてしまう死亡フラグの数々や、パニックモノでよくある主要キャストの自己犠牲パターンといい、プロレスにおける名勝負や名アングル(抗争模様)の流れを思わせるベタさ加減も見事。
ハリケーンによって生まれた3本のトルネードを爆弾で消滅させる作戦に出るクライマックスは色々とヒドイ。勿論良い意味で。
特にヘリから爆弾を投下するヒロインが空中でサメにパクリンチョされるシーンとそのオチは秀逸。「予想通りだけど、本当にやりやがったな!」的なオチが待っています。
清々しいまでのバカ映画だった本作ですが、続編には元WWEで現TNA所属のカート・アングルの出演も決定(※)。筆者的にはレスラー出演映画のお約束(プロレス技の採用等)が組み込まれるのか、今から楽しみであります。
(文/シングウヤスアキ)
※アトランタ五輪アマレス金メダリストの経歴を引っさげてWWEで活躍したトップ選手。続編での役柄はニューヨーク市の消防署長役だそうです。