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プロレス×映画

エディ・ゲレロとバティスタの偽友情コンビの顛末を思い出す『48時間』

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 ここ数回、空気が淀むような珍作ネタ続きの当コラム。さすがに少しは換気したいなッ、てことで今回はバディムービーの名作として支持を得る『48時間』(1982)がお題。

 脱走犯に同僚を射殺された刑事が、犯人の元仲間で事情を知るチンピラの仮出所要求を渋々飲み、タイムリミット48時間内に事件解決に挑むという、いわゆる"オッドカップル(デコボココンビ)"に類する作品。

 主演の刑事役はニック・ノルティ。そしてチンピラ役は、人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」での活躍が監督のウォルター・ヒルの目に留まり、本作が映画デビューとなったエディ・マーフィ。
 2年後の初主演作『ビバリーヒルズ・コップ』で持ち前のマシンガントークが大ヒット。当時「コメディ映画界で"エディ"といったらマーフィ」というくらいの不動の地位を得ることになります。

 一方、プロレス界の"エディ"といえばエディ・ゲレロ。こちらのエディも、日本・メキシコや「ECW」と始めとする北米インディシーンで実績を積み、「WCW」を経て「WWE」デビュー。マッチョディーバのチャイナとの恋愛ネタを機にチカーノ(メキシコ系アメリカ人)ギミックが定着。その発展型となる甥チャボとのコンビ「ロス・ゲレロス」でのズル賢いけど憎めないキャラクターが決定打となり人気が爆発。2004年から急死する2005年にかけて当時のWWEで最も声援を受けたトップスターになりました。

 さて話を戻します。本作コンビの棲み分けは、チンピラのレジーが自身の目的のためにハッタリや計算で動く"知性派"で、刑事のケイツはレジーの仮出所書類を躊躇なく偽造するなど直情的な問題行動が目立つ"野性派"。

 レジーが前述のズル賢いエディ・ゲレロなら、ケイツは何事も豪腕で解決するバティスタ(※)です。
 エディ・ゲレロは晩年、世界ヘビー級王座を巡ってバティスタと仮りそめの友人関係を装う(褒めて落とす挑発合戦など)「偽友情」抗争を展開。そののち、本当の友情に目覚めてコンビを組むことに。そんなエディ・ゲレロとバティスタのストーリーは、最終的に信頼関係が生まれた本作『48時間』のデコボココンビと重なります。

 ちなみに映画史上伝説の大爆死作『プルート・ナッシュ』を前後して"エディ・マーフィ印の笑い"は、靴底に張り付いたガムのような印象になってしまっていますが、本作はデビュー作とあって抑え目。ぶっきら棒な演技のノルティおじさんとの緊張感のあるやりとりは、ドッと沸かせるような笑いではなく、ニヤリとさせるような味わい深さがあって新鮮です。
 
 尚、1990年には本作の7年後を描いた続編『48時間PART2 / 帰って来たふたり』が公開されますが、やはりというか、大スターとなったエディ・マーフィが主演に。さらに製作にも関与したせいか、エディ印の笑いが確実に牙を剥いており、この辺りで評価が別れるかも(筆者は嫌いじゃないです。つまり珍作寄りってことですけど!)。

(文/シングウヤスアキ)

※バティスタは、WWEでトップ選手として活躍後、俳優業に進出(当コラムで2つの出演珍作を紹介済)。国内では3月公開予定の『リディック:ギャラクシー・バトル』や、マーベルコミック原作『Guardians of the Galaxy』の主要キャストを射止めており、映画界でも注目され始めている模様。今年1月には現役選手としてWWEに復帰。二足のわらじで活動していくようです。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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