過去の実績とネームバリューに乗っかれるだけ乗っかる。そんなプロレス界の流儀に通じる正統派珍作『ベオウルフ』
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- 1,480円(税込)
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未知の珍作を求めて某VODサービスで見つけた、クリストファー・ランバート主演の『ベオウルフ』(1999)。同題の有名叙事詩を原作とする作品としては、ジェラルド・バトラー主演版(2005)、ロバート・ゼメキス監督版(2007)に先駆けて製作された本作。
しかし、どこかで聴いたようなハイテンションなテクノサウンドとエレクトリファイドなタイトルシーケンス、本篇が始まってみれば中世ファンタジーというより『マッドマックス』風のヒャッハーな世界観のバトルモノで、「先生、ボクなんだかこれ知ってます」的既視感が......。
そう、これは「あの○○○(ヒット作)製作陣と△△△(主演・助演級俳優)が再びタッグ!」の"地雷"パターン。あの『モータルコンバット』シリーズの製作陣と、第1作で重要人物ライデン役を務めたランバート兄貴がタッグを組んだ"フェイタリティ"な怪作だったのです!
そんなワケで本作は原作ストーリーを中世スチームパンク風にレイプもといアレンジし、『モタコン』のハッチャケ異次元バトルのノリとお馴染みピロピロサウンドを下地に、出世作『ハイランダー』シリーズ以来、剣士役のイメージが強いランバート兄貴がライデンを思わせる銀髪でフィーバー&ハッスル。その「原作含めて過去の実績とネームバリューに乗れるだけ乗ってみました」感は、もはや清々しいレベルに。
プロレスも「ネームバリュー」が幅を利かせる業界とあって、退団していた人気選手が数年ぶりに復帰! あのライバルと数年ぶりにタッグ or 対決! なんてのは良くあること。
プロレスラー自体、一度当たったギミックが生涯のパブリックイメージになるため、一番人気があった頃のギミックかそれに近いネームバリューを活かす形で古巣に復帰するというのも共通項。WWEでいうと、退団・復帰を繰り返しているダスティン・ローデスの場合、復帰の際は一番のヒットギミック「ゴールダスト」に固定化されています。
本作の話の筋としては、呪われた砦と恐れられる城塞都市を舞台に、夜な夜な住人や兵士を襲う謎の怪物との攻防と、その怪物に関係する(LAメタルのPVにでも出て来そうな風貌の)妖艶な魔女の討伐までが描かれているんですが、主人公ベオウルフは「俺様、最強の剣士です」みたいな感じで登場したくせに剣はほとんど使いません。
二丁クロスボウや仕掛け鎖鎌やらのギミックウェポン頼みかと思えば、怪物との一騎打ちは素手で(一応隠し短剣を使いますが)闘うというモタコンイズムが炸裂。
試合開始直後はお気に入りの(総合格闘技で使われる)オープンフィンガーグローブを強調するように格闘技風に構えてジャブを放つけど、数分過ぎたらプロレス流の大振りパンチになっちゃうアンダーテイカー御大みたいで微笑ましい。
また、無駄なアクション(褒めてます)に定評のあるロブ・ヴァン・ダムの得意技ローリングサンダー(ダッシュから前方回転して背中を落とす技)よろしく、ベオウルフさんのジャンプ移動は常に無駄な回転が入るため、吹き出さずにはいられません。
魔女との決戦でやっと少し剣を使うクライマックスシーン。CGと特殊メイクの融合は「モタコン時代より進化した、のかな......」程度の感想を憶えたものの、城が炎上する最後のシーンのショボさに正統派珍作たる胆力を確認させられたのでした。
(文/シングウヤスアキ)