ベテラン選手が引退試合に挑む、みたいな良い話系ドタバタ劇『グレート・スタントマン』
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今回のお題は、まだ生身のスタントアクションが全盛だった時代の作品『グレート・スタントマン』(1978)。スタントマンという職業やアバウトな作風がプロレスっぽい、筆者お気に入りの凡作です。
バート・レイノルズ演じるベテラン・スタントマンのサニー・フーパーは、痛み止めでごまかしながら仕事を続けるも、いよいよそれも限界に。キャリアの最後に誰も実現したことのない世界初のスタントに挑戦する......というのがあらすじ。
どうやら勝手に著名スタントマンのバディ・ジョー・フーカーをもじっているほか、作中で撮影中の映画は『007』っぽいというか、そのシーンのBGMがオマージュというより完全に『007』風だったりと、そこはかと香るテキトー感。
さらに、恋人役はレイノルズ先生の70年代のステディ(の一人)で複数の主演作に共演させていた女優だそうで、フーパーの師匠役もその女優さんの実生活の継父(俳優)がモデルだったりと、公私混同な側面も。
安易に話題の人物に乗っかるギミックレスラーや人気選手ともなると一族郎党をネタにしかねないプロレス界の傾向と重なり、そのアバウト感は嫌いになれないところです。
さて、作中での映画撮影中、理詰めの若手スタントマンのスキー(『超音速攻撃ヘリ・エアーウルフ』主人公ホーク役の人)がスタントチームに中途加入するのですが、元々フーパーと仲が悪い監督は早速スキーを重用。
昔ながらのスタントマンのフーパーは、若手選手の引き立て役を強いられるベテランのような立ち位置に。さらに追い打ちをかけるように腰椎に異常が出始めたことから引退を決意します。
プロレスラーにも痛み止めを打って仕事を続ける選手も多いようですが、薬では手に負えない骨や神経の異常が原因で引退を余儀なくされた選手も相当数にのぼります(近年WWEでは、エッジが首の神経の異常で引退)。
しかし、せめて大仕事を最後に引退したいというのが男心。ロケットカーで100メートル級の谷間をジャンプするというスタントの詳細を知った恋人の強い反対で一旦は諦めるも、未練を断ち切れず、プロデューサーの復帰要請にあっさり快諾しちゃうフーパーさん。
大ジャンプに至るまでのスタントシーンも予算云々でやり直しが効かないので全て一発撮り(という設定)というのは、観客の前ではやり直しが効かないプロレス的。
また、復帰したフーパーがスキーを信頼して助手席のナビ役に専念する点も、自分の立場を弁えて引退の花道を飾る(プロレスの場合、負け試合)いぶし銀の選手のようです。
基本は主演スターとその取り巻きによる往年のドタバタ劇ですが、様々なジャンルのスタントが収められており、70年代のスタントフッテージ(※)として楽しめる作品となっております。
(文/シングウヤスアキ)
※余談ですが、2007年発売のスタント再現ゲーム『スタントマン:イグニッション』では、本作のスタントシーンをモチーフにしたようなステージが存在。筆者はゲームが先でしたが、既視感を憶えるシーンがいくつか思い当たりました。