ヒーロー界も格差社会! ヒーロー人生もハードモード!な『スカイ・ハイ』
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就職氷河期の昨今、家業を継ぐ=安定とは言い難い。ましてプロレス業界にあっては、そもそもからして不安定!
てことで今回は、世襲ヒーロー養成学校が舞台のアクション・コメディという、世襲レスラーの悲喜交交と重なる部分が多い『スカイ・ハイ』(2005)がお題でございます。
ディズニー製作という品行方正なキッズ向けながら、主人公の父にカート・ラッセル、体育教師にブルース・キャンベル(死霊のはらわたシリーズ)と、筆者のようなB級映画好きがウホっとなる配役も売りです。
世界最強ヒーロー夫婦の息子なのに能力が未開花のままヒーロー養成学園「スカイ高校」に入学することになってしまった主人公ウィル。当然、クラス分けで「ヒーロー組」ではなく、支援専門の「サイドキック組」に振り分けられてしまい、それを両親にも明かせず、"エリート"のヒーロー組からはイジメられ・・・てな感じで、主人公が「落ちこぼれ」の立ち位置から物語が始まります。
米プロレス業界が地域密着型興行(テリトリー制)とプロモーター連盟(NWAやAWAなど)で成り立っていた時代は、プロモーター(興行主)から看板レスラーまで一族郎党だったりして、絶大なゴリ押しや地盤の支持によって世襲レスラーが割りとすんなり人気者として受け入れられた時代でした。
ところが、WWE(当時はWWF)の全米席巻(※)によりテリトリー制が崩壊していく80年代中盤以降、地盤の強みを失った影響で実績を作れず、親の威光がむしろ足かせになる世襲レスラーも目立ち始めます。
『スカイ・ハイ』では、両親が偉大過ぎるため、主人公ウィルの落ちこぼれ感が際立つ演出なのですが、このパターンはプロレスでも同様で、共に世界王者を父に持つグレッグ・ガニアやグレッグ・バレンタインは、親のおまけや人気スターの負け役として扱われ、(実際の実力はさておいて)七光りレスラーの代名詞的存在に。
時は変わり、WWEでザ・ロックやランディ・オートンら世襲レスラーがトップに立ち、それを観て育った二世/三世レスラーが急増し、WWEの育成部門『NXT』には世襲新人がひしめく状況になりましたが、「スカイ高校」同様、基本はやはり才能至上主義。
世襲レスラーといえど力量不足なら"ジョバー"組に振り分けられ、最悪TVマッチ要員から外され、下積み生活送りになるシビアな世界には変わりがないようです(そうならないための有力関係者との人脈も重要だとか)。
一方の本作『スカイ・ハイ』ですが、ディズニー映画で主人公が落ちこぼれのまま終わるワケもなく、悪党の息子(良きライバル)とのバトル中に父譲りの怪力が発現。一転してヒーロー組に移籍となったウィルは学園のマドンナとイチャつき、幼馴染女子の"好き好きフラグ"を折りまくる天然リア充野郎にジョブチェンジ。おかげでまさかの事態に陥っちゃうけど・・・みたいな感じで最後までベタな展開が楽しめます。
友情最高! 幼馴染エンド最高! といったオチなのですが、要は適材適所を意味しており、つまりはトップになれる人は限られているというハードモードな現実がそこにあったりしちゃうんだけども!
(文/シングウヤスアキ)
※WWEも同族世襲企業ですが、3世代目のビンス・マクマホン現会長が不仲だった先代の父シニアの会社を買収。金で全てを解決するという悪徳オーナー「Mr.マクマホン」のイメージを地で行く立身出世劇です。