レスラー出演映画シリーズ:そのまま過ぎて色々残念な『シー・ノー・イーヴル』
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今回「レスラー出演映画シリーズ」としてご紹介するのは、WWEの映画製作部門「WWE Studios(当時はWWE Flims)」が単独で手掛けた最初の劇場公開作『シー・ノー・イーヴル 肉鉤のいけにえ』(2006)。
"赤い処刑マシーン"の異名で知られるケインが演じた殺人鬼が話題となり、公開当初は全米6位を記録した作品です。
相棒を殺され、自身は左腕を切断されたものの、殺人鬼の頭を撃ち抜き、眼球をえぐり出された唯一の生存者を救出した警官フランク。その4年後、フランクは、DQNな若者たち向けの刑期短縮プログラムの監督員として古ホテルでの奉仕作業に帯同するが、ホテル内で誰かの視線を感じ始めた矢先、眼球がえぐられた死体が見つかる。4年前に頭を撃ち抜かれた筈のあの殺人鬼が現れ、ひとり、またひとりと惨殺し、彼らを徐々に追い込んでいく......みたいなお話。
いかにも怪しい古ホテルの中で、ティーンエイジャーがサイコな殺人鬼によって惨殺され、最後には意外な真相が明らかになるという、ホラー映画の売れ線要素を盛り込んだ本作ですが、ズバリ、一言で言えば「ビミョー」です。
主役といえる殺人鬼「ジェイコブ・グッドナイト」は、WWEのケインを知っている人間からすると、イメージほぼそのままで、"歯並びが悪くなったケイン"といった感じ。頭からウジ虫がチョロチョロ湧く程度で、ジェイソンやフレディのような超人的描写はなく、あくまでサイコな殺人鬼という味付けなせいか、"WWEのケイン像"を重視し過ぎた節を感じるうえ、その末路に至るやられっぷりのせいで、ジョバーモード(負け役)の時の手際の良すぎるケインそのもの。
さらに舞台となる古ホテルの仕掛けには度肝を抜かれます。管理人のバア様の説明でホテル内に様々な仕掛けがあることが前振りされるため、期待せざるを得ないワケですよ。そして、いよいよ盛りのついたカップルがコトを始めようとしているベッドに何かが仕掛けがあるよ! さあどうなるの!・・・とワクワクしてたら、グッドナイトさんの部屋の呼び鈴が鳴るだけ!
そう、ベッド上の獲物を惨殺する仕掛けでも、捕獲する罠でもない、ただの警報。ほかに身の毛もよだつ拷問器具が投入されるワケでもなく、ほぼ全編、グッドナイトさんが孤軍奮闘するだけなのである。
ただし各人の死に様だけはそれなりに見もので、動物愛護主義者の友愛ルーピー女子は逆さ吊り状態のまま野犬にムシャムシャされたり、携帯電話依存症のビッチ女子は携帯電話を無理矢理飲み込まされたり、本作ならではの皮肉の効いた惨殺シーンといえます。
しかしながら、邦題サブタイトルにつけられた「肉鉤」も後半は一切使わないし、ライバル的存在と思われた元警官フランクが物語中盤であっさり死亡するせいもあり、ケインを知らない人が観てもグッドナイトというキャラクターの余韻が残りそうにもない本作。
これがプロレスならまずフランクは死なせないし、肉鉤も最後まで使ってトレードマークとして印象づけたでしょう。そもそも主役モンスターがはっきり死ぬ描写が許されるのはシリーズ3作目くらいだろうが!と言いたいのであります。
(文/シングウヤスアキ)