映画もWWEもステレオタイプな過剰が演出当たり前!ということを思い起こさせる『ショウ・タイム』
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TV番組としてのWWEは、旗艦番組「RAW」を筆頭に派手な演出で知られ、各番組群は毎週放送されている分、会場やネット上でのフィードバックに敏感で、それを元に随時番組に変化を与えているのも特徴。
そういった観点からいくとロバート・デ・ニーロとエディ・マーフィーによる凸凹バディモノ『ショウ・タイム』(2002)は、かなりWWE的な映画といえるかもしれません。
堅物刑事ミッチ(デ・ニーロ)がTV局の取材カメラを銃で撃ってしまったことで、賠償代わりに密着取材を受けるハメに。女性プロデューサーの過剰演出の数々と、相棒になった俳優志望の制服警官トレイ(エディ)の悪ノリで2人の番組『ショウ・タイム』は大人気となるも捜査現場は混乱続き。派手なカーチェイスで街に被害が出たことでついに取材禁止に。しかし、コンビ愛に目覚めた2人は密かに捜査を再開し、独自に事件解決を目指す...というもの。
密着ドキュメントのはずが、プロデューサーの溢れ出るステレオタイプな過剰演出魂によって、ミッチとトレイが元刑事役俳優から演技指導を受けたり、署内の2人のデスク周りはガラス張りに変貌し、個性的な刑事像を出すためといって、ミッチの車はハマーに変えられ、自宅も勝手に改装され、飼い犬として元麻薬捜査犬まで登場する始末。
WWEでも、試合やスキット(小芝居)収録前に当事者とスタッフ(時にはマクマホン会長なども同席)で打ち合わせが行われ、演技指導が入ることも。演出上のアイテムにしても、デル・リオやJBLといった金持ちキャラは高級車でアリーナ内に登場するし、超人気者になると控え室もネームプレート入りの個室にグレードアップするなど、『ショウタイム』のように日を追う毎にギミック(キャラクタ)を際立たせる演技や演出方針に調整が入るワケです。
ちなみに犬といえば、巨乳ディーバに対して実況解説のジェリー・ザ・キング・ローラーが「パピー!パピー!(巨乳の隠語)」と大喜びした流れから、巨乳ディーバが子犬を連れて登場した時期もありましたが、視聴レートが子供向けに変わったことでこのパピーも含めて性的な要素は封印状態に(※)。
また、『ショウ・タイム』の中ではトレイの悪ノリで盛りに盛った台詞を入れたり、番組名が決まったりしますが、WWEでもスター本人のアイデアが採用されることもあります。
なかでもストーンコールド・スティーブ・オースチンの十八番の台詞「What?」は、オースチン本人と同僚のクリスチャンとの電話中に生まれたフレーズで、それを番組でのスピーチ中に使ったことから爆発的に認知され、オースチン引退から数年経つ今現在でもファンが自発的に行うチャント(掛け声)のひとつになりました。
映画後半で主役2人が刑事の仕事の意義とコンビ愛に目覚めて本物のバディになったように、WWEでも当事者同士が演出を超えるような試合を魅せられないと本物のスターにはなれないのです!
(文/シングウヤスアキ)
※WWEの視聴レートの変更は、試合での出血を含めた暴力的な表現や性的な表現などをマイルド化させてしまっているため、90年代後半~2000年代前半の黄金期にあったような混濁合わせ持っていた熱気を失ったという見方もあります。