万年脇役にもいつかは主役が回ってくる、という希望の星、それが『マチェーテ』
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映画にもプロレスにも主役を引き立たせる脇役たちの存在が欠かせませんが、普段、万年脇役ばかりの人物が主役を張るとなると何だか生暖かい目で応援したくなるのが人情というもの。今回のお題となる『マチェーテ』(2010)はその代表例といえる作品です。
セガール大先生、デ・ニーロ、ドン・ジョンソンとメインイベンター級俳優に加え、ミシェル・ロドリゲス、ジェシカ・アルバ、リンジー・ローハンという豪華キャストを脇に抑えて主演を務めるのは、ダニー・トレホ! そうです。メキシコ系の悪人役でよく見掛ける、リアルに一人二人始末してそうなあのイカツイオジサマです。
従兄弟でもあるロバート・ロドリゲス監督がタランティーノとのコラボ映画企画『グラインドハウス』内で作った偽映画予告を元に製作された本作は"命の重さ感ゼロ"のバイオレンス描写に、カラッとしたお色気、激情と哀愁のラテン音楽のコンボによるいつものロドリゲス印のハイテンション・アクション。要はトレホ兄貴版の『デスペラード』なので、あらすじを語るだけ無粋というもの。とはいえ概要だけ触れておきますと「メキシコ不法移民問題に絡めて、妻子を殺された元捜査官が復讐する物語」。
トレホ兄貴は個性派のひと言で片付けるには無理がある異様な存在感を放つ"出オチ系脇役(勿論良い意味で)"ですが、プロレスにおいて主役を張るまではいかないけれど、ある種のスパイスとして認められた存在というと、日本人選手なら「アイアンフィンガー・フロム・ヘル(鉄製グローブ)」の飯塚高史、WWEなら先日サプライズ復帰した金ピカ全身タイツの変態野郎ゴールダストがその系統でしょうか。
ただ、トレホ兄貴のように『マチェーテ』くらいでしか主役を張れないケースでいくと"世界イチの怪力男"マーク・ヘンリーの境遇がそれに近いかもしれません。
生存競争が超シビアなWWEの場合、期待の新人であろうと一度つまづくとジョバー要員入りが関の山。しかし、それなりの実力とキャラ的な売りがあれば、トップベビーフェイスの対抗馬として起用されるチャンスが残されています。
ヘンリーには、重量挙げ五輪出場実績とその説得力のある巨体があるため、しばしば白羽の矢が立ち、あらゆる王座の挑戦者として起用されてきました。とはいえ約15年所属して実際に"主役"たる王者を名乗れたのは、欧州王座、ECW王座、世界ヘビー級王座をそれぞれ1回だけ。世界王座に至っては所属14年目でようやく獲得という、まさにトレホ兄貴状態。
70歳目前にして「マチェーテ」という当たり役を手に入れたトレホ兄貴のように、ヘンリーさんも再び主役になれるのかどうかですが、2月上旬に復帰して間も無く世界王座挑戦者候補のひとりになったので、もしかすると...(まあ正直、負け役が濃厚なんですが)
ちなみに本作エンディングで予告されていた続編『マチェーテ・キルズ』が2013年秋に公開予定。新キャストにメル・ギブソン、チャーリー・シーンに加え、まさかのレディ・ガガが参戦することでも話題になっています。トレホ兄貴とどう絡むのかまったく想像出来ませんが、国内公開までのお楽しみとしておきましょう。
(文/シングウヤスアキ)