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プロレス×映画

映画でもプロレスでも"小さい"ことは武器になる

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 映画を含めた芸能の世界は、あらゆる才能が集まる場所ですが、特に欧米では、何らかの理由で身体が小さい「ミゼット」たちが多数活躍しています。
今回のお題『ウィロー』(1988)は、ミゼットが主役のファンタジー映画。主役ウィローを演じたワーウィック・デイヴィスは、『スター・ウォーズ』シリーズのイウォーク族役...はキグルミなのでアレとして、『ハリー・ポッター』シリーズのフリットウィック教授役でご存知の方もいるかも。

 で、映画『ウィロー』は・・・川から流されて来たダイキニ(人間)族の赤ん坊を発見したネルウィン(ミゼット)族の見習い魔法使いウィロー。赤ん坊を人間族に返すため、村長からその役目を仰せつかります。しかしその赤ん坊エローラが、世界を混沌に陥れようとしている魔女バブモルダを倒す力を持つ存在であることが明らかに。道中で出会った戦士・マッドマーティガン(ヴァル・キルマー)やポンコツ妖精コンビと共にバブモルダの魔の手からエローラ、そして世界を救うために奔走する・・・という冒険活劇。

 プロレスにもミゼットさんが進出していますが、かつて全日本女子プロレスの名物前座としてミゼットプロレスが存在したものの、人権団体の抗議でTV中継から外され、選手不足も相まって徐々に衰退。一方、メキシコでは「ルチャリブレ(プロレス)」がサッカーに並ぶ国民的人気スポーツとあって、ミゼット選手よる「ミニ・エストレージャ」部門が存在するなど、こちらは今も活況だとか(但し、単に背の低い選手も多い)。
 また、アメリカにもミゼットプロレスは存在したものの、WWEでは長らく定着せず、2006年になってようやく初の所属ミゼットスターとなるホーンスワグル(※)がデビュー。以来、悪戯好きのマスコット的存在として人気者になっています。

 このホーンスワグルはコーナーポストからの飛び技「タッドポール・スプラッシュ(おたまじゃくしが泳ぐような仕草が由来)」を必殺技に持ちますが、やはり基本的にはマスコット。大きい相棒のお膳立てでフィニッシュを決める以外では、支援要員としてチョコマカとリング内外を走り回るのが仕事。また、相手を怒らせて自爆を誘うこともしばしば。

 映画のウィローも、力技は無理だし、才能はあるものの魔術は見習いレベルということで、実働部分はマッドマーティガン(とその仲間の兵士たち)が担当。さらに最終決着戦では、バブモルダの"自爆"を誘っているシーンあたりも「相棒と頭脳を使って勝つ」というホーンスワグルの勝利の方程式に符号します。

 "小さい"ことががむしろ武器になるこの図式ですが、短時間で感情移入を促す必要があるプロレスと映画には特にフィットした図式なのかもしれません。

 ちなみにワーウィックさんは世界最大の「ミゼット」タレント数を誇る芸能事務所を経営していますが、その名も「ウィロー・マネージメント」。
 さらにプロレス蛇足ネタでは、マッドマーティガンのライバルとなるケール将軍を演じたパット・ローチは、プロレスラーとしての経歴を持ち、新日本プロレス参戦経験(70年代前半)もあるそうな。なるほど、存在感はあるけど"受け手への配慮"が見えるモッサリアクションはそのせいだったのね!

(文/シングウヤスアキ)

※:当初は「リトルバスタード」でしたが、俗語として「糞ガキ」などの意味を持っていたため、WWEのファミリー路線(視聴レート引き下げ)移行と同時に「ホーンスワグル」に改名。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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