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プロレス×映画

映画もプロレスも凸凹コンビは"乳化"して名コンビになります

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 前回に続き今回もバディネタです。定番の組み合わせといえばやはり「凸凹コンビ(Odd couple)」ですが、このジャンルの特徴は"水と油"の相反性と"乳化現象"によるカタルシス。
てなワケで今回のお題『ナショナル・セキュリティ』(2003)は、"水と油"感を強調したマーティン・ローレンス(『バッドボーイズ』シリーズの小さい方)主演のドタバタ犯罪コメディ。

 警官のハンクはアール(マーティン・ローレンス)を車泥棒と疑い職務質問。その最中、飛来した蜂を追い払おうと警棒を振り回していたら、市民に「警官による黒人暴行」と勘違いされ、採用試験に落とされて以来警察に恨みを抱くアールの適当な証言によって、解雇&服役するハメに。さらに出所後に就職した警備会社には天敵アールも所属していて、再会初日に倉庫襲撃事件まで発生。しかし事件を機に犬猿の二人がコンビを組み(ハンクにとっては元相棒の仇を取る目的がある)、衝突し合いながらも悪の組織に挑む...というお話。

 出会いからして"水と油"のアールとハンクですが、最近のWWEで"水と油"といえば、ケインとダニエル・ブライアンの『チーム・ヘル・ノー』です。

"目に映るモノ全てが憎悪の対象"であるケインと"極度の強迫観念持ち"であるブライアンは、精神カウンセリングを一緒に受けさせられますが(受けさせたのは両者共通の元恋人AJ【※】)、競い合うばかりで効果は見えず。そこでカウンセラーは「お互いを許し合う」試合を計画し、試合形式をファン投票に委ねたのですが、選ばれた形式は何と「ハグ対決」。渋々ハグし合ったものの「やれば出来るやん」程度のスキンシップが結局、殴り合いへ。

 とはいえ、このハグを機にチームを組まされた両者は「相棒のフィニッシュ寸前に勝手にタッチして権利を奪い、勝ち星を自分のモノにする」という"俺が俺が連携"でWWEタッグ王座を獲得したうえ連続防衛。トータルで見ると何だかんだで息が合っているというコンビとなります。

『ナショナル・セキュリティ』では、倉庫事件の不始末で警察に連行され、事によっては再び刑務所送りになりそうなハンクの窮地に、アールが「コイツは職質騒動の謝罪に来ただけ」といって謝罪せざるを得ない状況を作りつつも結果的に助け舟を出したシーンや、終盤でアールが悪党に追い込まれて崖から落ちそうになるや、ハンクがクレーンで悪党を吹っ飛ばして大喜びも、肝心のアールはさらに危ない状況になったシーン辺りは『チーム・ヘル・ノー』の"俺が俺が連携"的。

 水と油が"乳化"して旨いスープになるように「凸凹コンビ」が最終的に名コンビになるのはお約束・・・なのですが、撹拌し続けなければ乳化現象は続かないワケで「凸凹コンビ」は常に"俺が俺が"状態が望ましい?

(文/

    シングウヤスアキ

※その当時、看板番組『RAW』のGMだったため。ちなみにAJは、2012年のWWEストーリーの中で、ブライアン、CMパンク、ケイン、シナ、ドルフ・ジグラーと次々に男を乗り換えて来たWWE史上最も尻軽な小悪魔チャンです。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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