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プロレス×映画

静かに観ている方が違和感を感じる観客参加型映画

ロッキー・ホラー・ショー [DVD]
『ロッキー・ホラー・ショー [DVD]』
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
1,533円(税込)
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 映画館というと何かを食べるクチャり音や荒い鼻息すら迷惑行為になり、耳障りなウィスパートークを垂れ流すリア充カップルは爆散しろとかそういう感情が渦巻くような静寂を是とする規律的空間ですが、今回のお題『ロッキー・ホラー・ショー(1975年)』は、そんな常識を真っ向から否定する「観客参加型映画」。

 本作上映中、観客が一緒に歌ったりツッコミを入れたりしたことから、ステージ演出を組み合わせた上映会イベントが欧米を中心に広がり、「観客参加型映画」として認知されるようになったそうで、「ホラーコメディ feat. ホモ&バイセクシャルな英国産ロック・ミュージカルを映画化した」という、その字面からして騒々しい文化的背景故にそうなって然るべきだった模様。
 原作ミュージカルは現在もカルト人気を誇り、日本でも直近では(WWEファンで知られる)古田新太さん主演で公演されるなど数年置きにリバイバルしています。

 ちなみにあらすじは、若いカップルが婚約報告で恩師の下を訪ねる道中、嵐に遭い、車がパンク。電話を借りに古城に辿り着けば、何やら怪しいパーティナイツ。変人城主に誘われるがまま人造マッチョグッドルッキングガイ「ロッキー」覚醒の瞬間に立ち会ってしまったことで色々イケナイ事態に...というもの。

 さて、WWEを表現するキーワードの中に「観客参加型ショー」があります。試合会場を舞台とした群像劇でもあるWWEでは、観客と一体になった「チャント(応援、ヤジ、ツッコミ、スーパースター達の台詞合わせて合唱など)」は舞台演出であり、番組/ショーの一部。
 さらに応援の言葉やヤジなどを書いたサインボードを掲げ、公式Tシャツでは飽き足らないファンがコスプレに手を染めるといったように、静かに観戦している方が違和感を感じるような状況を是とするのが「観客参加型ショー」たる所以です。

 今回、筆者が視聴した『ロッキー・ホラー・ショー』のDVD[※]には、劇場体験を再現する特典が含まれています。その中の「劇場体験スイッチ」を試して観てみましたが、歌のシーンではスクリーン前で俳優が演技し、観客も踊り狂い、場内には紙吹雪が舞い、雨のシーンでは観客持ち込みの水鉄砲で濡らし合うなどのバカ騒ぎっぷり。
 なるほど「静かに観ている方がおかしく見える」という意味でもまさにWWE的。

 作品自体もカップルの恩師が出て来る辺りから超展開の連続で、「んなアホな」「ナニこの展開」と画面にツッコんでしまうこの感じもですが、何度も観ることで「あのシーンが来るぞ!」というお約束が成立するため、定番の決め台詞や必殺技に合わせてチャントを合わせるWWEのお約束とも重なります。

 ブラックエロバカ変態ホラーロックミュージカル映画なので人を選ぶ作品ですが、耳に残る歌の数々といい、ハイな気分になりたい時にオススメ。ボッチな君は、DVD/Blu-ray特典の「レスポンス・スイッチ」をオンにして本場のチャントを聞きながら「観客参加感」を愉しむと良いでしょう。

(文/シングウヤスアキ)

※本作のDVD/Blu-rayパッケージは複数存在しますが、「劇場体験スイッチ」などの特典機能は、少なくとも2002年以降に発売されたパッケージに含まれているようです。購入の際はご注意を。

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シングウヤスアキ

会長本人が試合までしちゃうという、本気でバカをやるWWEに魅せられて早十数年。現在「J SPORTS WWE NAVI」ブログ記事を担当中。映画はB級が好物。心の名作はチャック・ノリスの『デルタ・フォース』!

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