プロレスラー出演シリーズ:ザ・ロック『DOOM』
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10~30代の米国人男性が好むものとしてプロレスとビデオゲームは支持層が重なるそうで、実際、新作ゲームの広告展開としてWWEのPPV(ペイパービュー)大会をスポンサードしたり、WWE自身も毎年新作ゲームをリリースしています。
「Wrestler in the Movie(WitM)」の第2弾として取り上げるのが、まさにそんな組み合わせといえる、ザ・ロック(日本ではWWE番組内字幕から「ロック様」の名称が定着)ことドゥエイン・ジョンソン出演作『DOOM(2005年公開)』。
ファーストパーソンシューター(FPS)黎明期の記念碑的タイトル『DOOM』の映画化作品で(3がベース)、要はホラーSFモノ。軍事企業の火星上施設内の遺跡発掘物研究エリアが緊急隔離され、事態収集のため特殊部隊が送り込まれるが...というよくある系統。
そしてロック様は独特のコメントセンスと良い意味でドタバタ感溢れる躍動的レスリングで、1990年代後半から2000年代前半のWWEを席巻したアイコン。2004年から本格的に映画俳優に転向しています。
その"ロック様"率いる特殊部隊が地球から謎のテレポーターで火星の研究所に到着後、あれこれやって謎の怪物との戦闘を経て真相が明らかになる中、事態は最悪の展開に突き進むのですが、その一方で観ているこちらがイライラしてくるのは何故だ...。
まず、この作品は原作ファン向けであることがひとつ。御馴染みのモンスターやトンデモ武器BFGなど原作ファンならウホ!となれるのだけど、忠実が故に難点も。
筆者も原作『DOOM3』をプレイしたことがあるのですが、とにかく画面が暗くて何がなんだかな状態。映画もその「暗さ」を再現しているため、やたら眼が疲れるわ、暗いシーンでいきなり驚かされるわで、海馬の奥底に封印していたあの腹立たしい記憶も呼び起こされ、ああイライラ(ゲームの方はギラついたグラフィックが特徴でその明と暗のコントラスト差に眼がヤられる)。売りである後半のFPS演出も、画面の暗さに加えて早過ぎるカメラワークにより、FPS初心者が陥り易い"3D酔い"を味わえるという要らん意味での忠実さ!
でも一番大きいのは、俳優転向6作目のロック様が普通に俳優しちゃっているもどかしさ......。と悶々としていたら、終盤、モンスターに襲われた筈のロック軍曹が戻ってくるや主人公との肉弾戦へ突入し、恐らく現役時代はやった事も無いであろうエアプレーン・スピン(※1)が唐突に炸裂! そう、このやっちゃった感が観たかった!
終わってみれば、作品のオチへの転じ方もロック様のプロレスラーとしての下地を活かす形に収まった(収まってしまった?)『DOOM』。やはり「プロレスラー出演映画」はこうでなくっちゃ!
ついでにいえば、台詞回しに僅かに"らしさ"が伺えるため、字幕で観るとロック様の"妙技感"(※2)を味わえることでしょう。吹き替え版はロック様感ゼロなので、気をつけましょう!
※1:エアプレーン・スピン/相手を担いで回転して投げ捨てる、現役時代のアニマル浜口さんも得意とした技。映画やテレビに出たプロレスラーがよくやらされてる技のあの技!
※2:妙技/ロック様の最も有名な決め台詞"If you smell what The Rock is cookin'!"の字幕表現「ロック様の妙技をたっぷりと味わえ!」から。スメラララララ~
(文/シングウヤスアキ)