大物キャストもあっさり死ぬWWE的ヒエラルキーの『デスペラード』
- 『デスペラード コレクターズ・エディション [DVD]』
- ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 1,480円(税込)
- >> Amazon.co.jp
「巨悪に立ち向かうヒーローモノ」は物語として超定番ですが、今回のお題『デスペラード(1995年公開)』はそのジャンルの中でも、ロバート・ロドリゲス監督独特の作風によるキッチュでカラッとした暴力描写が話題となった作品。
恋人を殺され、自らは左手を撃たれたことでギターを弾けなくなった元マリアッチ(メキシコでいう楽団員)の主人公(アントニオ・バンデラス)がその恨みを晴らすべく仲間の力を借りながら宿敵であるギャングのボスの命を狙う復讐劇です。
勧善懲悪の概念が根っこにあるプロレス界、『デスペラード』な類似ネタは古くからあります。WWEの場合、ビンス・マクマホン会長による"悪の絶対的経営者"(とその取り巻き)に抵抗するストーンコールド・スティーブ・オースチンやショーン・マイケルズ、ザ・ロックらとの抗争が有名。特に反社会的なアンチヒーローとしてマクマホン会長に闘いを挑んだオースチンは、目的のために人を殺めることも厭わぬ本作主人公と重なります。ヒロインと会ったその日にベッドインしちゃう面は性欲絶倫設定のロック様的ですが。
また、主人公のバンデラスを始め、ブシェミやタランティーノなど個性派キャストも光る『デスペラード』。誰も彼もが重要人物に見えるのに、あっさり死ぬのもポイントです。
ハリウッドの八名信夫ことダニー・トレホ演じる殺し屋、超強そう!と思ったら主人公と間違われて撃たれ、あっさり死亡! 最終決戦で楽団時代の2人の仲間キター!と思ったらギターケースマシンガン&ギターケースロケラン披露して間もなく死亡! ついでに敵の若頭はほぼ何もしないで轢かれて死亡!
...とまあ枚挙にいとまがありません。しかし全編通して流れる陽気なメキシコ音楽も相まって、人の生き死にの感覚が麻痺してくるほどの"軽さ"がクセになります。
この"重要人物だと思っていた人物があっさり死亡"というパターンは、プロレス界にもよく見られます。勿論勝ち負けの話ですが、例えばWWE王者/世界ヘビー級王者(主役・横綱級)に対してはIC王者/US王者(大関級)ですら、基本ジョバー(ヤラレ役)扱いという潔いヒエラルキーが、WWEにはありますから。
ちなみに本作『デスペラード』は、ロバート・ロドリゲスの「マリアッチ三部作」の第1作『エル・マリアッチ』の続編兼リメイクとしても知られていますので、3作まとめてみるのも良いでしょう。
ラストを飾る3作目『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』は、引き続きバンデラスを主人公に、ジョニー・デップ演じるCIA捜査官が麻薬組織のボスとクーデター首謀者の暗殺を依頼するお話で、よりシュールさを増した暴力表現にピタゴラスイッチ的アクションが満載。そして相変わらず個性派キャストがあっさり死んじゃいます!(ミッキー・ロークの死に様がこれまた...)
これまでの西部劇のオマージュに加えて、座頭市のオマージュまでぶっ込んで来るなど、我々日本人にとっても馴染み易い作品なので、スカッとしたい時にオススメのシリーズです。
(文/シングウヤスアキ)