プロレスラー出演シリーズ:ロディ・パイパー『ゼイリブ』
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映画をWWE/プロレス的視点で語る当コラムですが、やはり「プロレスラーが出演する映画」を避けては通れません!
プロレスラーの映画出演といえばガタイの良い(そしてアホな)大男役がテンプレ。悪党の用心棒辺りが多いので、アクション映画好きなら誰かしらを目にしている筈。まんまレスラー役として出ることも多く、『ロッキー3』のサンダーリップ役のハルク・ホーガンは最もメジャーな例かも。
このホーガンの様にプロレスラー(引退後も含む)が物語の核に関わる役柄を演じた作品もそれなりに存在します。
そこで「Wrestler in the Movie(WitM)」シリーズの一本目として取り上げたいのが、カルト作を多く手掛ける"鬼才"ジョン・カーペンター監督作品『ゼイリブ』(1988年公開)。WWEでも御馴染みの"ラウディ"ロディ・パイパーがまさかの主演。
その頃のパイパー御大は現役バリバリでしたが、当時のWWE(WWF)といえばホーガン全盛期で、どちらかというとヒールとしてボコられる存在。レスリングよりもマイクパフォーマンスに長けていたため、映画界への転向も自然な流れだったのか、現在に至るまで多くの作品に出演しているご様子です。
で、『ゼイリブ』のあらすじは、上流階層の人間に化けたエイリアンが普通の人間を洗脳し、秘密裏に地球全域を支配していることに気付いてしまった主人公(パイパー)達が、テレビ局を根城とするエイリアンに闘いを挑むというもの。
まだTVがメディアの中心だった頃の作品なんですが、一方的な情報の真意を知らずにそのまま受け取ることの危険性や、消費ばかりを促す広告の跋扈、一部の上流階層に支配された格差社会の中で苦しむワーキングプアな主人公...ってなんか現代社会と大差がないよ!
街中の看板の洗脳標語やTV放送の洗脳信号、人間に化けたエイリアンの正体が見えるサングラスが物語のキーとなるんですが、観終わる頃には「今の世界もエイリアンに支配されてるかもなぁ」と思えてきて、まったく嫌な時代だぜ(キリッ てな感じで反芻するんだけど、同時にロクな大人になれなかった自分にハッとしてウッツリしちゃう、そんな映画です。
プロレスラー出演映画といえば、雑な演技から漏れ漂う"プロレスラー感"を愉しむのがオツなんですが、この作品はそれほど違和感が無く、その点ではマイナス(つまり普通に観るにはプラス)。しかし、アクションシーンではバックドロップやサイドスープレックスなど脈絡無しにプロレス技が炸裂しており、プロレスラー出演映画のお約束をしっかり押さえた作品になっております。
(文/シングウヤスアキ)