碁界の新時代を担う令和三羽烏にインタビュー

一力遼天元 撮影:小松士郎
井山裕太一強時代の終えん――。二度の七冠保持を達成した絶対王者に襲いかかる三つの影。18年に許 家元(きょ・かげん)が碁聖を奪取したのを皮切りに19年には芝野虎丸(しばの・とらまる)が王座を、20年に一力遼(いちりき・りょう)が天元をそれぞれ井山から奪取して、新しい時代の幕を開いた。いつからか「令和三羽烏(がらす)」と呼ばれるようになった3人はどんな思いを抱えてこの先の時代を歩むのだろうか。

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■Q あなたにとって令和三羽烏の他の2人はどんな存在ですか?

一力 常に意識する存在。特に七大タイトル戦では自分より早く結果を出したという点で、発奮材料になりました。
許 ライバルであり、仲間でもある。一力さんにはだいぶ負け越しているので、壁と言ったほうがいいかもしれません。
芝野 ずっと「一番近い目標」にしてきた2人。ただ、許さんは院生同期なので、より近い存在として見えていました。
――今年、一力、許は24歳を迎え、芝野は22歳になる。今でこそ同世代だが、10代の頃の2歳差は大きい。また、一力の入段は中1の夏と突出して早かった(許は中3の春、芝野は中3の夏)ため、若かりし頃の許、芝野から見た一力は、少し前を走っている感覚だっただろう。
ただ、前述のとおり七大タイトル獲得のタイミングは許、芝野、一力の順である。一力の活躍は早碁棋戦を中心に目覚ましいものがあったが、それだけに大舞台でなかなか結果が出なかったことは焦りにも似た思いがあったのかもしれない。

■Q あなたにとって井山裕太棋聖はどんな存在ですか?

一力 ずっと目標としてきた存在。数年前までの追いかけている感覚よりは、最近は近づけているのかなと。これからタイトルを増やし、世界で活躍するためにもこれまで以上に意識しています。
許 憧れの存在です。最近打つ機会が増えて感じたのは、勝敗よりも碁の内容を追求していること。勝つだけなら簡単そうな局面でも、自分の碁のために最善を目指しているように思う。仮にそれで負けたとしても、強くなって次の碁につながればという感覚なのでしょうか。
芝野 プロを目指している頃は「あんなに勝てればいいな」と思って見てました(笑)。初めて打った時はここまでこれたんだなという思いはありましたが、最近では単純に強敵という感じですね。
――許の視点は、「常に最善を目指す」という井山のイメージを補完するもので、それが向上心によるものとの観察は面白い。芝野は井山に限らず、特別な感覚を他の棋士には持たないそうだ。
文/村上 深
※続きはテキストでお楽しみください。
※段位・タイトルはテキスト発売当時のものです。
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