油にうまみはないけれど……? 「油のコク味」は和食の強い味方

たまねぎの煮びたし 撮影:蛭子 真
京都の老舗料亭の3代目、村田吉弘(むらた・よしひろ)さんの連載「だしいらずでつくる和食のはなし」。9月号では「油」の持つコクを生かした和食を教えてくれました。

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日本ではその昔、油は高価だったので、庶民にとっては明かりを灯(とも)すために使うものでした。食用にしていたのは、貴族やお坊さんなどの特権階級。特に動物性たんぱく質をとらないお坊さんにとっては、栄養補給の面からも、大切な食材であったと思います。
時が下った現代、油はとりすぎを心配する存在になりました。また健康によいとされる新顔の油もいろいろ出てきて、選び方や使い方で迷っている方も、いてるかもしれません。
日本料理の場合、「油物」と呼ばれる揚げ物以外では、あまり油を使う料理はありませんでした。しかし油は料理にコクを与えてくれ、おいしくしてくれます。油が手軽な存在になった今、適切に食材を生かす使い方をしていくのがええと思います。
欧米では、油にうまみがあるという誤解があったと聞いたことがあります。おそらくそれは、うまみ成分のある食材と油を組み合わせた料理が、油の効果でよりうまみを感じやすくなったからやと思います。また酸化した油に対して人は、うまみと似たおいしさを感じるという研究結果もあるそうです。なのでこの先、五味とうまみに続く、人が感じる第七の味として「油のコク味」が定義されることがあるかもしれません。
今回の料理は二品とも、うまみがしっかりある野菜と油の組み合わせ。たまねぎも大根もグルタミン酸が豊富です。また、ちりめんじゃこ、みそもしっかりうまみ成分があります。さらに油揚げは、酸化した油をまとっていますから、鉄板の組み合わせです(笑)。でも、どちらの料理も油を使わないでつくると、もの足りない味になってしまいます。油は和食にとっても頼もしい味方なのです。
※つくり方はテキストに掲載しています。
■『NHKきょうの料理』連載「だしいらずでつくる和食のはなし」2021年9月号より

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