球根は手間がかからない

発根萌芽した状態で市販されるヒアシンスの芽出し球根 撮影:田中雅也
秋になると園芸店の店先に並ぶ球根。ころんとしたフォルムが愛らしく、土の中に埋めておきさえすれば春にかわいい花を咲かせます。そんな球根に恋して、販売や生産まで始めてしまった園芸家の井上まゆ美(いのうえ・まゆみ)さんに、球根がどんなものなのかを教えてもらいました。

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■球根は丸いばかりではない!?

球根は芽を出して花を咲かせるための養分を蓄えて、地下で肥大した根や茎や葉などの総称で、正式な学術用語ではなく園芸用語です。養分をどこに蓄えるかによって、さまざまな形があります。
代表格のチューリップはタマネギと同じく養分を地下にある葉に貯蔵するタイプで球根は丸みを帯び、ラナンキュラスはサツマイモと同じく根に貯蔵するタイプで細長い形です。
球根植物も花が咲くとタネができます。ただし、そのタネをまいても開花まで何年もかかり、咲く花は親そっくりではありません。それに対して球根は子どもではなくクローンなので、親と同じ花がほぼ翌年咲きます(※)。
※市販されている球根はほぼ翌年咲くが、まれに数年後に開花することも。

■球根は手間がかからない

井上さんによると、「球根の最大の魅力は手間なく花が楽しめること。タネから育てるような失敗がないし、鉢上げ(発芽した幼苗をしっかり育てるため、1本ずつポットに植え替えること)などの手間がかかりません」。眠っている球根を植えつけ、水やりすれば目を覚まして生育が始まります。開花まで水やり以外の手間なしです。
チューリップは、早いものなら3月下旬から遅いものは5月上旬と、品種によって幅広い開花期を選べます。花形や花色もとても豊富です。
チューリップ、スイセンヒアシンスなど主役級のほか、小さいけれど1球からいくつも花を咲かせる小球根まで、種類もバラエティー豊かに楽しめます。「なかには植えっぱなしで球根がふえたり(分球)、翌年も咲くものがあってお得感もあります」。
■『NHK趣味の園芸』2021年9月号より

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