稲葉陽NHK杯新選手権者、初優勝を語る

撮影:河井邦彦
第70回NHK杯戦は、稲葉陽(いなば・あきら)八段の初優勝で幕を閉じました。稲葉NHK杯新選手権者に気持ちをお伺いしました。

* * *

過去2回の決勝では、最後は一方的になって負けてしまいました。今回はギリギリの熱戦になり、そのうえで結果を残せたので、とてもうれしいです。
昨年の9月から講座の講師も務めさせていただきました。それだけに、できるだけ長く勝ち残りたい気持ちが例年以上にあり、早々と消えたくないという思いが、決勝進出につながったのではないかと思います。
準決勝も苦しい戦いでした。佐藤天彦九段の振り飛車に意表をつかれ、序盤のリードも粘られているうちに失いました。決勝進出はもちろんうれしかったのですが、過去のことがあるので気持ちを引き締めました。
斎藤八段には、少し前にA級順位戦で負けています。ただ、その一番だけということではなく、NHK杯戦以外では厳しい状況が続いていますし、むしろこの決勝という大きな舞台が残っていたことで、切り替えができた気がします。
決勝戦は選択肢の多い将棋になり、悩ましい局面が続きました。互いに読みが当たりませんでしたね。行けそうな感触があった局面から攻めあぐねて、自信がない終盤になってしまいました。こちらがいい手を指し続けなければいけない状況だったので、秒読みでは厳しい展開です。勝ちになったかと思ってからも、無我夢中で読み落としがないか確認していました。
表彰式は、自分が先に表彰していただけて、だんだん喜びがわいてきました。準優勝のときは優勝者の表彰を先に見ていましたから。
NHK杯は、思っていたより重かったですね。撮り直しになったら、持ち続けていられなかったかも。筋力トレーニングをしないといけません(笑)。1日でも長く勝ち残りたいと思って戦った今回の気持ちを忘れずに、次の第71回トーナメントに臨みます。また、この優勝を機に他棋戦も頑張っていきたいと思います。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2021年5月号より

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