草マルチで野菜を元気に

草に混ぜて剪定枝も草マルチとして利用。まだ小さなサトイモの根元にたっぷりと敷いた。撮影:渡辺七奈
1年にわたって連載する「週1から始めるオーガニック」。今回のテーマは「草とのつき合い方、活かし方」。「畑の草は抜かねばならぬ」と思っている菜園家は、価値観がひっくり返りますよ!

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■草マルチで野菜を元気に

ここは東京都多摩市にある恵泉女学園大学。キャンパスに隣接した教育農場では、「生活園芸 I」のクラスの1年生が、週に1度の授業で、初めての野菜作りに有機栽培で挑戦中。7月半ばのある日、学生たちは初夏に植えつけたサトイモの畑で、何やら作業を始めました。
「野菜の根元にしっかりマルチを敷いてね。これが、サトイモの収穫量を左右する大きなポイントになるからね!」。指導しているのは、有機栽培の専門家、澤登早苗(さわのぼり・さなえ)さんです。「はーい」と学生たちが手にとったのは、ポリフィルムなどのマルチシートではありません。サトイモの根元にかぶせたのはひとかかえもある枯れた草でした。
「私たちはこれを“草マルチ”と呼んでいます。畑で除草した草をしばらく置いておいたものです。これを野菜の根元に敷くと、土の水分を保つので水やりの必要がなくなり、雨の日は泥はねを防ぎます。野菜の病原菌の多くは土の中に潜んでいるので、泥はねを防ぐことができれば、野菜が病気になるリスクも低くなるんですよ。そして有機物である草マルチは土壌微生物が分解し、土を肥やしてくれます。草は、有機農業では大切な資源なんです」。学生たちはさらに、近隣の植木屋さんからもらったという剪定枝(せんていし)もサトイモの根元に運び入れました。「草マルチに利用する植物は、草以外の植物でもかまいません。草は分解が早くてすぐになくなってしまうので、身近で手に入る剪定枝なども混ぜています。草よりも時間はかかりますが木もきちんと土に還ります」。

■青い草はマルチにしない

草マルチの材料を得るため、この農場では積極的に草を生やしています。学生たちは手やカマで草を取り、それを畑の通路などに積んでおきます。土にすき込む必要はなく、ただ置いておくだけ。枯れて分解しかけたら、野菜の根元に置きます。
「抜いたばかりの青々した草は、草マルチには使いません。まだ青いうちは、ほかの植物の生育を阻害する物質を含んでいたり、分解する過程で出るガスが植物の根を傷めたり、発酵熱で植物が傷んだりすることがあるからです。また、“チッ素飢餓”を引き起こすこともあります」。チッ素飢餓とは、作物の生育に必要なチッ素が土の中に不足する状態。新鮮な有機物を土の中に入れると、それを微生物が分解する際、必要なチッ素が足りなくなって土の中にあるチッ素まで取り込んでしまうのだそうです。
「ただ、サツマイモ栽培では青い草を入れることもあるんですよ。サツマイモは土にチッ素分が多いと、葉ばかり茂ってイモが太らない“つるボケ”になるので、あえて青い草を入れてチッ素飢餓の状態にすることもあります。でも普通は、草が青いうちは野菜から離しておいて、枯れてきたら根元に置くようにしましょう」
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK趣味の園芸 やさいの時間』連載「週1から始めるオーガニック」2020年6・7月号より

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