中村太地とは何者か

撮影:河井邦彦
平成の将棋界はどのように動いてきたのか。平成の将棋界をどうやって戦ってきたのか。勝負の記憶は棋士の数だけ刻み込まれてきた。連載「平成の勝負師たち」、2019年10月号には中村太地(なかむら・たいち)七段が登場する。

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■彼とは何者か

読者の皆さんにとって、中村太地とはどのような棋士なのだろうか。
平成の終わりに王座のタイトルを得た実力者として、早稲田大学政治経済学部で執筆した論文が高く評価された知性派として、テレビ番組やイベントでスマートに振る舞う「東の王子」として。それぞれに思い浮かべる姿があるだろう。
本誌読者の方なら、巻末連載「向井葉月のしょうぎ大好き!」での平易な解説ぶりを印象に残したり、今年3月まで4年間務めた『将棋フォーカス』司会の卒業を惜しむ人もいたに違いない。

■中村太地とは何者か。

平成23年に棋士の取材をする立場になって以来、私が考え続け、解き明かそうとし続けてきたテーマのひとつでもある。なぜか。中村について考えることは「勝負師とは何か」を考える上で、極めて興味深い示唆を与えてくれる行為だからだ。
平成18年に弱冠17歳で棋士になった中村はデビュー後の14年間でタイトル戦を4度戦い、平成29年の第65期王座戦五番勝負では3勝1敗で羽生善治を破り、将棋界の頂点に立っている。平成23年度に記録した勝率8割5分1厘(40勝7敗)は昭和42年度に中原誠十六世名人が残した勝率8割5分5厘(47勝8敗)に次ぐ歴代2位の年度勝率記録である。
160人以上の現役棋士が奪い合う8つの頂のひとつに達し、将棋史で上から2番目の足跡も残したことになる。つまり、中村は平成後期の将棋界において、時代をつくったとは到底言えないにしても、特別な輝きを放った棋士の一人と言えるだろう。
4度のタイトル戦を含め、20代前半から30 代に達するまでの中村を追走する中、私がずっと抱え続けた思いがある。彼を頂点へと導いていくものの正体とは何なのか、という疑問である。
文:北野新太
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
※続きはテキストでお楽しみください。
■『NHK将棋講座』連載「平成の勝負師たち」2019年10月号より

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