クリエイティブな女性たち143人はどのように創作活動と生活に向かい合っていたのか?

天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常
『天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常』
メイソン・カリー,金原瑞人,石田文子
フィルムアート社
1,980円(税込)
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 古今東西の芸術家がいかにして日々の制作や仕事に向かっていたかを紹介した書籍『天才たちの日課』。ここには161人もの天才や偉人が取り上げられましたが、女性はそのうち27人しかいなかったそう。そこで女性に焦点を当てて書かれた第2弾が、本書『天才たちの日課 女性編』です。

 今回登場するのは作家、画家、デザイナー、詩人といった女性アーティスト143人。前作には「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」という副題がついていたのに対し、本書は「自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常」という副題がついています。これは、女性による創造的な活動が否定された時代に生きていたり、母親として子どもの世話と創作活動の間で苦しい選択を迫られたり、性的偏見と闘ってきたりといった"必ずしも自由でない日常"にいた女性たちが多いことにあるようです。男女で区別することはジェンダー的に危険な部分もありますが、男性に比べると女性のほうが、仕事ができる環境を作るためには犠牲を払う必要のある場合が多いのかもしれません。

 著者のメイソン・カリーは「今回は本人と家族の関係にも多くの注意を払った。多くの場合、彼女たちの時間をいちばん多く要求するのは子どもだったからだ。したがって、彼女たちがクリエイティブな仕事と家庭内のごたごたや義務などをどのようにさばいているのか--(中略)その点を明らかにすることが、彼女たちの日常をありのままに描くために欠かすことができなかった」と記しています。

 というわけで、こうしたテーマのもとに作られた本書。さまざまな国の、さまざまな女性アーティストが、日々どのような仕事をし、日常を過ごしていたのか、小さな肖像画を描くように非常にコンパクトに(長くても一人につき5ページ以内)まとめられています。

 服飾デザイナーのココ・シャネル、歌手のニーナ・シモン、科学者のマリー・キュリー、バレリーナのアンア・パヴロワといった有名どころもいれば、一般にはそこまで広くは知られていない舞踏家や社会運動家、写真家といった人たちも。その中で、日本人も一人だけ取り上げられています。それは、前衛芸術家の草間彌生さん。彼女のパートは1ページにも満たないものですが、その簡潔さがまた彼女の仕事ぶりや生き方をドキュメント的に浮かび上がらせています。

 ここから自身の仕事や人生のヒントを得るもよし、読み物的に「こんな生き方をしている人もいるのか」と楽しむもよし。皆さんがもし自由に対するフラストレーションや葛藤、試行錯誤などを抱えているとすれば、時代や国は違っても、きっと共鳴するものがあることと思います。

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