北アルプスの高山植物を楽しむ

夏の北アルプス。撮影:上林徳寛
雄大な山々が空を支える北アルプス。白馬五竜高山植物園には、北アルプスの植物がぎゅっと1か所に集められています。「本来この標高には見られない植物や、海外の高山植物にも会えますよ」と語る植物園の坪井勇人(つぼい・はやと)さんにお話を聞きました。

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白馬五竜高山植物園の坪井勇人さんは、北アルプス一帯の植物の専門家。「白馬村周辺は11月初旬に雪が降り始め、5月の連休まで雪に閉ざされます。このあたりの積雪は3m以上! じつはこの雪に覆われていることで、高山植物は凍結や厳しい寒さから守られています。そして春先には、雪解け水が適度な湿度をもたらし、植物たちの芽生えや成長に適した環境を形づくってくれます」
また、高山植物の多くは背が低く、大きな花を咲かせます。森林限界以上の標高は日光をさえぎる樹木がないため、高山植物は日光を浴びてのびのびと育ちます。そして白馬五竜高山植物園周辺の自然地域ではもともと蛇紋岩(じゃもんがん)という特殊な地質の影響で森林限界の様相を示し、高山帯ではないにもかかわらず、高山植物が自生しています。
このような特徴をもつ高山植物を、より観察しやすく1か所に集めたのが、2000年夏に開園した白馬五竜高山植物園です。この園に植物担当として携わってきた坪井さんは、「夏のスキー場の敷地に、スタッフや地元の人々が、一から高山植物を植え、育て、見どころをつくってきたんです」と教えてくれました。
園内には数百mの標高差があるため、場所ごとに大きく異なる植物相を見ることもできます。
「園では自然のいいところをより楽しみやすく、親しみやすくするためにいろいろ工夫しています」と坪井さん。
この植物園だけなら、散策にそれほど時間はかからず、1〜2時間でも気軽に楽しめます。
地元では毎年夏、北アルプス山麓の白馬村や小谷村のジョイントによる「白馬Alps花三昧」という花を満喫するイベントも開催。
「このあたりは温泉もあり、夏の観光の楽しみが多い場所。一泊二日の日程なら、初日は白馬五竜高山植物園で軽く足を慣らし、翌日朝から栂池や八方尾根でトレッキングと組み合わせるのもいいですね」と坪井さんがアドバイスしてくれました。
■『NHK趣味の園芸』2019年7月号より

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