災害時にも役立つソーラークッキング

ソーラークッカーでココアケーキを焼く。撮影:田渕睦深
神奈川県中南部にあり、相模湾に面した茅ヶ崎市。太陽の光が降り注ぐサザンビーチでよく知られている湘南エリアだ。
自然に恵まれた茅ヶ崎里山公園では、「晴れた日はソーラークッキング」というイベントが毎月行われている。「ソーラークッカー」と呼ばれる専用の調理器具が並び、料理のできていく様子が見られ、試食もできる。イベントを主催しているのが、西川豊子(にしかわ・とよこ)さん。ソーラークッキングとはどんな料理なのか、特徴や魅力を伺った。

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■ソーラークッキングはどんな料理? 長所や短所は?

「ソーラークッキング」という言葉を初めて耳にする方も少なくないのでは?
ソーラーパネルのように太陽光を電気に変えてから使うのではなく、ソーラークッキングは、反射板で光を集めてそのまま料理する。「虫めがねで太陽光を集めて黒い紙を燃やす」という理科の実験と仕組みは似ているが、火は出さずに加熱する。
基本的に下ごしらえや味つけなどはふだんの料理と変わらない。器具に鍋をセットすれば、あとはおひさま任せ。でき上がるのを待つだけだ。
太陽光だけで料理するので光熱費はかからない。また、ゆっくり時間をかけて加熱するので素材のうまみが増し、料理が冷めにくく温かさが長く続くといったメリットがある。ただ、火加減は調節できない。当然ながら雨の日は料理できない。また、強風時はクッカーが風にあおられることがあるため、避けたほうがよいそうだ。
 

■ソーラークッキング専用の調理器具がある




西川さんがソーラークッキングと出合ったのは24年前のこと。自然エネルギー研究者のソーラークッカーを見たことがきっかけだった。
「お味見させていただいたのは、焼きそばで、ガスでつくった料理と変わらずおいしかったです。ただ、調理器具はとても大きく、女性には扱いづらいと感じ、自分が使いやすい器具にしようと改良を重ねてつくってしまいました。もともとDIYが好きなので楽しかったですよ」と西川さんはさりげなく語る。
ソーラークッキングには専用の調理器具があり、タイプもさまざま。光を集めて調理するパラボラ型は、炊飯、煮物、汁物などガスコンロ感覚で使える万能タイプ。内部に熱を蓄えてオーブンのように調理するボックス型はパンやクッキーも焼ける。発泡スチロールの箱内に黒い紙を貼り、乾燥だけを行うタイプはラスクや干し野菜づくりに活躍する。
西川さんにクッカーを使うときのポイントを伺った。
「クッカーの置き場は日当たりのよいところはもちろんですが、土よりコンクリートの上など湿気の少ない場所に置くことがポイントです。朝の9時から12時までにはソーラークッカーにセットして、14時には料理を終えるようにしましょう。また、料理中は必ずサングラスをしてください」
ソーラークッカーには反射パネルがあり、太陽光に当たるととてもまぶしい。目を保護するためにサングラスを着用しよう。
 

■ふだんから使っていれば災害時にも役立つ

茅ヶ崎でのイベントには、はるばる熊本から料理方法を知りたいと訪れた女性がいた。震災時、ソーラークッカーで湯を沸かし、温かい飲み物を提供することはできたものの、料理方法がよく分からず、フル活用できなかったという。熱心に西川さんに質問していた。
「ソーラークッキングはガスや電気が止まった災害時に活躍します。でも使い慣れていないと、いざというときにあまり役に立ちません。誰でも簡単に料理できるので、ふだんから楽しみながら使ってほしいですね。時間のことを考えれば、ガスのほうが効率的です。でも、急がずゆっくり調理して、おひさまと向き合う時間があってもいいのではないでしょうか」
そう語る西川さんは、一家に1台ソーラークッカーがある時代になってほしいと願っている。
※ソーラークッカーのつくり方、ソーラークッキングのレシピをテキストに掲載しています。あわせてお楽しみください。
■『NHK趣味どきっ! おひさまライフ』より

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