戦後最年長VS.史上最年少の戦い 

左/今泉健司四段、右/藤井聡太七段 撮影:河井邦彦
第68回 NHK杯戦  1回戦 第16局でぶつかったのは、今泉健司(いまいずみ・けんじ)四段と、藤井聡太(ふじい・そうた)七段。今泉四段は戦後最年長の41歳でプロ入りを果たし、かたや藤井七段のプロ入りは史上最年少の14歳2か月と、その経歴は真逆だ。注目の一戦を、今泉四段が自戦記で振り返る。


* * *


■呆然

3度目の正直で、NHK杯本戦初出場。予選を抜けたときは本当にうれしかった。何しろ、この棋戦はファンの注目度が違う。何より目立ちたがり屋の私、この棋戦で大暴れして、名を上げたいとかなり気持ちは高ぶっていた。しかし、舞い上がっていた気持ちは本戦トーナメント表を見て吹っ飛んだ。
対戦相手を見て呆然(ぼうぜん)。やりたい相手とも思っていたが、ここで来るか、というのが正直な感想だった。これからの将棋界を背負って立つスーパースター、藤井聡太七段である。


■とにかく前に

振り駒はと金が5枚で、先手番をもらった。戦型選択に迷いはなく、中飛車に構える。一番の相棒とともに巨大な壁に挑む。
藤井七段は、後手番での超速のような作戦。基本的に私は、最初のチャンスと思った局面は積極的に行くタイプ。さらに今日は挑戦者としての気持ちもあり、「とにかく前に!」と少々入れ込み過ぎなくらいに前に出ようと思っていた。
ただ、その手順がいまひとつで、▲4六歩に代えて▲5五銀と出るべきだった。本譜は藤井七段の反撃にあう。


■よさそうな手に見えた

△8六歩から△7五歩と軽快な手順で反撃が開始された。もちろんこれは私も読み筋で、▲8八歩と受けた局面は十分にやれると判断していた。
しかし次の△9二香は全く読んでいなかった。よい手かどうかは分からないが、これが筋という感じなのか。つんのめっている気持ちが、香一つ上がられただけで止まってしまった。
あまり上がりたくない▲7八金だが、いったんは耐えておく。△7七歩成のとき、妙に次の手がいい手に見えた。それが▲9五角(4図)だった。


※投了までの棋譜と観戦記はテキストに掲載しています。
※肩書はテキスト掲載当時のものです。
■『NHK将棋講座』2018年9月号より

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